研究課題
牛卵巣中に存在する初期胞状卵胞(直径0.5~1 mm)から採取した発育途上にある卵子(直径約95 um)を、卵子-卵丘細胞-顆粒層細胞複合体(OGC)として体外発育培養(IVG)法の改善に取り組んだ。その結果、世界で3例目の体外発育卵子を用いた牛体外受精由来産子を作出し、本IVG系により発育した卵子の正常性が確認された。次に、卵胞の重要な構成細胞である内卵胞膜細胞から分泌される骨形成タンパク質(BMP)4 の添加試験を行った。その結果、BMP-4添加は培養中の顆粒層細胞の直径を小さくし、P分泌を抑制することから、顆粒層細胞の黄体化を抑制することが明らかになった。しかし、50 ng/mlでBMP-4を添加した場合、顆粒層細胞の増殖が抑制され、卵子発育に悪影響がみられた。そこで、10 ng/mlのBMP-4を添加してOGCを培養し、得られたIVG卵子の発生能を確認した。その結果、IVG卵子の核成熟、体外受精成績はBMP-4無添加の場合と同等であったが、胚盤胞への発生率はBMP-4添加によって抑制された。顆粒層細胞のみの培養時にBMP-4を添加しても顆粒層細胞の増殖抑制は見られないことから、培養中の卵子と顆粒層細胞の相互作用がお互いの増殖・発生能に強く影響を与えていることが明らかとなった。次に卵巣内にもともと存在する胞状卵胞数(AFC)が卵子発生能に与える影響を体内および体外発育卵子を用いて比較した。その結果、体内発育卵子においては低AFC群の体外受精能が高AFC群より低く、IVGを行った場合は、培養期間中のOGC生存性に差は認められないものの、培養後の顆粒層細胞数は高AFC群の方が多かった。また、卵子ミトコンドリア活性は高AFC群の方が高く、核成熟率も高AFC群の方が高かった。以上の結果から、卵巣予備能の高い牛に由来する卵子の核成熟能および受精能は高いことが示唆された。
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