研究課題
申請者らはこれまでに、犬乳腺癌クローン細胞株を用いた多剤感受性スクリーニングにおいて、ミトコンドリア呼吸鎖阻害薬(MRCIs)が低悪性度のクローン株よりも高い浸潤性と幹細胞性を持つ犬乳腺癌細胞株のクローン株に対してより高い抗腫瘍効果を示すこと、中でもMRCIsの一つであり人医療においてⅡ型糖尿病薬として用いられているメトホルミンに着目し、その抗腫瘍効果の作用機序が非感受性株である低悪性度クローン株に対しては既に広く知られているAMPK-mTOR経路依存性に増殖抑制効果を示す一方で、感受性株である高悪性度クローン株に対してはAMPK-mTOR経路依存性ではなく、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)の細胞内量の減少によりその細胞増殖抑制効果を示すといったMRCIsの新規の作用機序を明らかにしてきた。その詳細な機序をさらに明らかにすべく、NAD依存細胞内酵素であるNAD依存性サーチュイン(sirtuin)ファミリー(SIRTファミリー)およびポリ(ADP-リボシル)ポリメラーゼ(PARP)を標的としてメトホルミン感受性犬乳腺癌クローン株および非感受性クローン株におけるそれらの発現量を評価したところ、両者の発現に違いは認められなかった。また、細胞内ポリ(ADP-リボシル)化タンパク量およびアセチル化タンパク質量の測定も試みたがそれらにおいても差異はみられなかった。これらの結果から、メトホルミンのNAD依存的細胞増殖抑制効果はSIRTファミリーおよびPARPを介さない作用機序であることが示唆された。
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The Veterinary Journal
巻: 205 ページ: 297-304
10.1016/j.tvjl.2015.04.026
巻: 205 ページ: 288-296
10.1016/j.tvjl.2015.04.025