研究課題/領域番号 |
25450444
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
山中 仁木 長崎大学, 先導生命科学研究支援センター, 助教 (30533921)
|
研究分担者 |
増山 律子 長崎大学, 医歯(薬)学総合研究科, 准教授 (60297596)
大沢 一貴 長崎大学, 先導生命科学研究支援センター, 教授 (90244756)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | ヘリコバクター属菌 / MIT01-6451菌 / マウス / 垂直感染 / 性状 / 病原性 |
研究概要 |
Helicobacter属菌には、消化器系に炎症病態を誘発し人獣共通感染症菌と認識される菌が多数存在する。本研究課題の目的の一つは、未同定菌のHelicobacter sp. MIT01-6451(MIT01-6451菌)について分離培養し、その病原性の有無を含む性状解析を行うことである。 H25年度では、このMIT01-6451菌が国内の研究機関や生産業者から当大学動物実験施設に搬入された主に遺伝子改変マウスの内20%を超える頻度で検出され、欧米の研究機関から輸入されたマウスでは検出されないことを明らかにした。つまり、この菌は主に日本国内の実験用マウスに広く保有されていることを示している。また、マウス体内におけるこの菌の主な生息部位は盲腸以下の大腸で一部マウスの胆嚢からも検出され、同属菌の中でもこの菌はenterohepatic typeであることを明らかにした。更に、分離培養に成功し形態学的および生化学的性状解析を行った結果、幅0.2-0.3μmで長さ2-5μmのらせん状桿菌で両極から1本ずつ鞭毛を持ちウレアーゼ非産生性であり、その性状は同属菌の中で比較的H. cinaediに類似していることがわかった。 更に、一部の感染マウスでは膣などの生殖器に菌遺伝子が検出されたが、母乳・胎盤・産道を介した垂直感染は野生型マウス(BALB/c・C57BL/6)では起こらないことを明らかにした。現在、重度免疫不全マウスにおける垂直感染の可能性についても解析中である。 本研究においてMIT01-6451菌の分離培養が可能となり、現在、重度免疫不全マウスであるSCID、あるいは野生型のBALB/cおよびC57BL/6マウスに経口投与による感染実験を行いその病態について組織学的解析を進めており、病原性の有無について明らかにする有力な知見を得つつある。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画では、H25年からH26年度にかけて2種のHelicobacter属菌(MIT01-6451とH. ganmani)の病原性を解析することとしていた。MIT01-6451菌については、分離培養は成功し形態および生化学的性状解析を終え、病原性解析に向けて研究を進めている。しかし、一方のH. ganmaniについては未だ分離培養ができていない。
|
今後の研究の推進方策 |
これまで入手できていなかったH. ganmani単独感染マウスを入手できたため、これまでと同様に菌の分離培養を試みる予定である。H. ganmaniは培養条件の要求性が複雑であり分離培養が困難なことが予想される。その場合、分離培養に成功しているMIT01-6451菌の1菌種に集中して研究を進めることも考えている。 また、現在進行中のMIT01-6451菌実験的感染マウスを用いた病理組織学的解析を精力的に行い病原性の有無について明らかにすると共に、脾臓および腸管局所リンパ節リンパ球を用いてヘルパーT細胞の免疫反応バランスを解析し、炎症性腸炎発症メカニズムへの関連を明らかにする予定である。 一方、ATP分泌性腸球菌の病原性解析についても、マウス腸内細菌中におけるATP分泌性を明らかにしその病原性について解析を試みる予定である。
|
次年度の研究費の使用計画 |
当初購入予定にしていたマルチガスインキュベータ(約70万円)について、MIT01-6451菌の分離培養に成功しその必要性が低まったため購入せず消耗品費に充てたため。 免疫学的解析に必要となる各種マウスサイトカイン抗体等試薬類の購入に充てる。また、今後使用頻度が高まる組織学的およびタンパク解析に必要な試薬類購入に充てる予定である。
|