研究概要 |
本研究では、伴侶動物(特に犬)の糸球体腎症の病態機序の解明を目的とする。平成25年度はサンプル採集と免疫複合体の沈着様式の解析を行った。 1.サンプル採集:新たに2例の犬について腎生検を実施し、詳細な病理学的検査を実施した。診断は光学顕微鏡、電子顕微鏡および免疫組織化学的所見に基づいて行った。検査の結果、1例は腎アミロイドーシスと診断された。光学顕微鏡検査ではHEおよびPAS染色においてほとんどの糸球体が均質無構造物質に置換されており、この物質はコンゴーレッド染色により橙色に染色された。1例は膜性増殖性糸球体腎炎(I型)と診断された。光学顕微鏡では糸球体にメサンギウム陥入と基底膜の二重化が観察され、電子顕微鏡ではこれらの所見に加えてdens bodyの沈着、足突起の広範な癒合が認められた。 2.免疫複合体の沈着様式:これまでの収集した犬の糸球体腎症に上記の膜性増殖性糸球体腎炎を加えた8例のサンプルで解析した。内訳は、膜性腎症2例、膜性増殖性糸球体腎炎5例、巣状性糸球体硬化症1例である。免疫複合体は、IgG, IgA, IgM, 補体C3について検索した。上記の膜性増殖性糸球体腎炎のサンプルは未固定凍結切片による蛍光抗体法で検出を行い、その他のサンプルはパラフィン切片による酵素抗体法(標識ストレプトアビジン法)で行った。解析の結果、全ての症例に共通する所見としてIgMと補体C3の沈着が認められた。次いで、IgGの沈着が多く、IgAは明瞭な陽性反応を示すものは1例のみであった。観察結果から、膜性腎症はIgGの沈着が強いこと、膜性増殖性糸球体腎炎はIgGおよびIgAの沈着に一貫性がないこと、巣状性糸球体硬化症はIgGとIgAの沈着が認められないことが示唆された。この結果は、ヒトの糸球体腎症の免疫複合体の沈着様式に類似していると考えられた。
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