研究実績の概要 |
本研究では、伴侶動物(特に犬)の糸球体腎症の病態機序の解明を目的とする。 平成26年度は、サンプル採集、免疫複合体の検出方法の検討、糸球体スリット膜関連分子の免疫組織化学的解析およびレクチン組織化学的解析を行なった。 1.サンプル採集:新たに4例の犬と1例の猫について腎生検を実施し、詳細な病理学的解析を行なった。その結果、犬では2例が免疫複合体糸球体腎炎(IgA腎症と膜性腎症)、2例が非免疫複合体糸球体腎炎と診断された。猫の1例は尿細管リピドーシスと診断された。特に、IgA腎症や尿細管リピドーシスは獣医学領域ではまれな疾患であり、現在、学会および論文発表の準備を進めている。 2.免疫複合体の検出方法の検討:前年度の課題としてパラフィン切片による免疫複合体の検出における非特異反応が残されたため、本年度は蛍光抗体法による解析を実施した。蛍光標識二次抗体および蛍光標識ストレプトアビジンを用いて様々な方法で検討したが、パラフィン切片では特異性の低さが改善されなかった。一方、新鮮凍結切片による解析も同時に行ない、新鮮凍結切片ではIgG, IgA, IgMおよび補体C3のすべてを高い特異性で検出できることが明らかになった。 3.糸球体スリット膜関連分子の免疫組織化学的解析:ネフリン、ポドシン、CTN4について解析を開始した。現在、抗体の特異性の確認および検出法の決定を行なっているところである。 4.レクチン組織化学的解析:7種類のレクチン(ConA, WGA, RCA, PNA, SBA, DBAおよびUEA-1)を用いて犬の糸球体腎症における糖鎖の発現様式の変化を開始した。その結果、RCAやPNAなど幾つかのレクチンでは、糸球体腎症での発現パターンが正常犬と異なっていた。現在、その発現パターンと組織障害、血液学的腎機能マーカー、蛋白尿および高血圧とどのように関連しているのかを解析している。
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