研究課題/領域番号 |
25450448
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
川手 憲俊 大阪府立大学, 生命環境科学研究科(系), 准教授 (80221901)
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研究分担者 |
玉田 尋通 大阪府立大学, 生命環境科学研究科(系), 教授 (10155252)
高橋 正弘 岩手大学, 農学部, 准教授 (50582334)
稲葉 俊夫 大阪府立大学, 生命環境科学研究科(系), 教授 (00137241)
瀬山 智博 地方独立行政法人大阪府立環境農林水産総合研究所(環境情報部、環境研究部、食の安全, 環境研究部, 研究員 (20443525)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | INSL3 / テストステロン / ウシ / 精巣 / 精液性状不良 / 卵巣嚢腫 / 妊娠牛 / 胎子性判別 |
研究概要 |
平成25年度は、ウシ血中インスリン様ペプチド3(INSL3) 測定による繁殖障害・生殖器疾患の検査・診断および妊娠牛の母体血中・尿中INSL3 測定による胎子の雌雄判別への応用について検討した。詳細は以下の通り。 ①-1.精液性状不良牛と正常雄ウシの血中INSL3濃度の比較:黒毛和種雄ウの性成熟期から性成熟後まで約1ヵ月間隔で血液採取を行った。精液を採取して検査を行い、精液性状が正常あるいは不良を判別した。血漿INSL3およびテストステロン濃度を酵素免疫測定法で測定し、精液性状不良例と正常例のホルモン動態を比較した。その結果、黒毛和種雄ウシの血中INSL3濃度は性成熟期から性成熟後にかけて増加するが、テストステロン濃度は顕著に増加しないことがわかった。一方、精液性状が不良(精子奇形や凍結融解後異常)であった雄ウシの血中INSL3およびテストステロン濃度は、同時期の正常な雄ウシにくらべて、顕著な異常はみられないことがわかった。 ①-2.卵巣嚢腫牛と正常雌ウシの血中INSL3濃度の比較:ホルスタイン種乳牛の卵巣嚢腫牛および正常牛を用いた。卵巣嚢腫牛は血漿中プロジェステロン濃度から卵胞嚢腫牛と黄体嚢腫(嚢腫様黄体を含む)牛に分類し、血漿INSL3濃度を測定した。卵胞嚢腫および黄体嚢腫の血中INSL3濃度に異常はみられないことが判明した。 ②妊娠牛の母体のINSL3測定による胎子雌雄判別の検討:ホルスタイン種妊娠牛の妊娠3ヵ月から9 ヵ月齢まで1 ヵ月間隔で母体の血液および尿の採取を行い、胎子の性別は最終的に出生時に確認した。例数を増やすために次年度も材料採取を継続し、精巣ホルモンの測定を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度に実施予定の①精液性状不良牛(①-1)および卵巣嚢腫牛(①-2)の血中INSL3濃度解析は、予定通り進捗し、採取した血液サンプルのホルモン測定は全て完了した。その概要を以下に示す。 ①-1の「精液性状不良牛と正常雄ウシの血中INSL3濃度の比較」の結果から、黒毛和種雄ウシの血中INSL3濃度は性成熟期から性成熟後にかけて増加するが、テストステロン濃度は顕著に増加しないことがわかった。一方、精液性状が不良(精子奇形や凍結融解後異常)であった雄ウシの血中INSL3およびテストステロン濃度は、同時期の正常な雄ウシにくらべて、顕著な異常はみられないことがわかった。また、①-2の「卵巣嚢腫牛と正常雌ウシの血中INSL3濃度の比較」の結果から、卵巣嚢腫牛の血中INSL3濃度に異常はみられないことがわかった。 一方、②妊娠牛の母体のINSL3測定による胎子雌雄判別の検討、については、共同研究先の牛の飼育頭数に限りがあり、さらに牛の妊娠期間が9.5ヵ月間と長いため、現時点では十分な数のサンプルが得られておらず、来年度も継続して行う予定となっている(これは事前の研究計画書にも記載済み事項である)。 以上の理由から、本研究課題は、おおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度の本研究課題の進捗状況ならびに今後の研究計画の内容や実行効率等を踏まえて、次年度と次々年度の研究計画として、以下のような内容を現在立案している。 平成26年度の研究実施計画 ②妊娠牛の母体のINSL3測定による胎子雌雄判別の検討:実験に供するウシの例数を増やすために、次年度も共同研究機関での材料採取を継続し、血中精巣ホルモンの測定を行う。③正常犬と潜在精巣犬の精巣・精巣上体のINSL3-同受容体システムの発現解析:正常雄イヌの性成熟過程における精巣のINSL3 含量と同受容体RXFP2 の発現動態を調べる。性成熟期、性成熟後および中年期の小型犬から精巣を採取する。採取した精巣のINSL3 とRXFP2のmRNA 量を測定する。またINSL3 量を測定するとともに、産生細胞を同定する。④正常犬と子宮蓄膿症犬の卵巣・子宮内INSL3-同受容体システムの発現解析:正常雌イヌの無発情期と発情休止期(黄体期)、および子宮蓄膿症犬の卵巣・子宮内INSL3 とRXFP2 の発現を解析・比較する。正常な雌イヌから卵巣・子宮を採取し、卵巣所見から無発情期と黄体期を判定する。上記の③と同じ解析技術を用いて、卵巣・子宮のINSL3 とRXFP2 のmRNA 量、INSL3量、INSL3 とRXFP2 の発現細胞を同定する。 平成27年度の研究実施計画 ⑤性成熟後の精巣ホルモン分泌におけるINSL3 の役割の解明:精巣機能におけるINSL3の役割を解明するため、INSL3もしくはその拮抗剤を精巣内に投与し、血中テストステロン濃度に及ぼす影響を解明する。投与前にヤギの静脈内にカテーテルを留置し、15分間隔の4時間の頻回血液採取を行う。4時間後にヤギの精巣内にウシとイヌのINSL3もしくはINSL3の拮抗剤を投与し、投与後の血中テストステロン濃度に及ぼす影響を解析する。
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