研究課題/領域番号 |
25450450
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
三好 真琴 神戸大学, 保健学研究科, 助教 (50433389)
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研究分担者 |
宇佐美 眞 神戸大学, 保健学研究科, 教授 (00193855)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 高脂肪食 / 敗血症 / トリブチリン |
研究実績の概要 |
近年、肥満に伴う代謝変化が敗血症下の病態に大きく関与すると考えられているが、どのように関与するかは未だ明らかでない。酪酸のprodrugであり食品成分であるトリブチリン経口投与はlipopolysaccharide (LPS) 投与下の肝障害抑制や脂肪酸酸化亢進による脂質代謝障害を改善する。本研究では、高脂肪食投与による肥満モデルラットを作製し、肥満が敗血症下の病態に及ぼす影響を明らかにする。またトリブチリン経口投与による本モデルにおける各臓器への効果を明らかにする。 これまでに、ラード含有高脂肪食(HFD)摂取ラットへのLPS投与により、血中LDLコレステロール濃度増加やHDLコレステロール濃度低下、等の脂質代謝異常を示すこと、また肝障害は増悪するが肺障害は軽減されるという炎症反応の程度が各臓器により異なることを明らかにしてきたが、26年度はさらに肝障害への作用として肝組織中の脂肪酸代謝酵素の変化を明らかにし、脂質メディエーターの網羅的解析を行なった。 12週間のHFD摂取によって、FATP、FABP、CPT-1などの脂肪酸酸化酵素およびSREBP-1c、FASなどの脂肪酸合成酵素はLPS投与後に増加した。脂質メディエーターに関して、アラキドン酸由来であるPGE2、TXB2はLPS投与1.5時間後にHFD群で増加し、6時間後に低下した。一方、LXA4、15-deoxy-PGJ2はLPS投与6時間後HFD群で増加した。EPA・DHA由来脂質メディエーターに関しても、LXA5や7,17-diHDoHEの増加が認められた。また、LPS投与後の肝組織中脂肪酸分画に関して、4週間HFD投与モデルでは飽和脂肪酸およびn-3系多価不飽和脂肪酸の低下、一価不飽和脂肪酸およびn-6系多価不飽和脂肪酸の有意な増加を認めたが、12週間投与モデルでは変化を認めなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、高脂肪食投与による肥満モデルラットを作製し、肥満が敗血症下の病態に及ぼす影響を明らかにすること、またトリブチリン経口投与による効果を明らかにすることを目的としている。 本年度は、研究目的の一つである肥満の敗血症下の病態に及ぼす影響として、肝障害増悪に脂質メディエーターの変化を含めた脂質代謝異常の関与を明らかにすることができた。また4週間と12週間のラード含有高脂肪食の摂取では肝臓中脂肪酸分画の変化が異なることから摂取期間による影響も明らかにすることができた。ただし、摂取期間による影響の原因については、現在検討中であり27年度中に明らかにする予定である。
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今後の研究の推進方策 |
26年度に引き続き、肝臓中脂肪酸分画および脂肪酸代謝酵素の測定結果を詳細に解析し、ラード含有高脂肪食の摂取期間による影響の原因を明らかにする。 また、もう一つの目的であるトリブチリン経口投与の効果を明らかにするため、トリブチリン投与モデルを作製した上で各臓器へのトリブチリンの効果を明らかにする。モデルが作製できれば、測定項目はこれまでに準じて評価するため、27年度中にトリブチリンの効果を明らかにできると考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該計画予定よりも肥満モデルラットでの測定が順調に進んだため。
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次年度使用額の使用計画 |
トリブチリン投与モデルの作製とその後の各種測定のために使用する。
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