研究課題
近年、肥満に伴う代謝変化が敗血症下の病態に大きく関与すると考えられている。本研究の目的は、1)高脂肪食投与による肥満モデルラットを作製し、肥満が敗血症下の病態に及ぼす影響を明らかにする。2)酪酸のprodrugであり食品成分であるトリブチリン経口投与によるlipopolysaccharide (LPS) 投与下の肝障害抑制をすでに報告しているが、さらにそれらの機序を明らかにする事である。1)ラード含有高脂肪食(HFD)摂取ラットへのLPS投与による肝障害増悪を明らかにしたが、肺障害はHFDで却って軽減され、それにSLPIが関与することを見出した。これは、病態によっては肥満は悪者ではないといういわゆるobesity paradoxの分子機序の一端を明らかにしたものと考えている。また、LC-ESI-MS/MSによる肝臓の脂質メディエーター網羅的解析を行い、多様な脂質メディエーターの変化を明らかにした。肝組織中脂肪酸代謝酵素に関しては、 LPS投与後にHFDでは、PPARαとPPARγ発現を上昇させた。また、脂肪酸酸化(FATP、FABP、CPT-1)と脂肪酸合成(SREBP-1c、ACC、FAS)mRNAを増加させた。他方、HFDはSCD-1 mRNAを低下させた。2)トリブチリン投与はLPS投与による血中脂質濃度増加、肝組織中の核内転写因子(PPARα、γ)および脂肪酸酸化酵素(FABP、CPT-1など)mRNA発現低下を抑制した。その機序としてトリブチリンはヒストンのアセチル化を促進しており、この変化を介して脂質代謝異常の抑制に関与している可能性が考えられる。肝臓中脂質メディエーターに関しては、アラキドン酸由来のロイコトリエンB4やトロンボキサンB2の抑制効果が認められている。また、HFDモデルでのトリブチリン摂取によるこれらの効果は現在解析中である。
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Clinical Nutrition ESPEN
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