研究課題/領域番号 |
25450452
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
加納 塁 日本大学, 生物資源科学部, 准教授 (00318388)
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研究分担者 |
鈴木 一由 酪農学園大学, 獣医学部, 教授 (30339296)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | プロトテカ / 牛乳房炎 / 抗体価 / ワクチン開発 / ELISA |
研究実績の概要 |
試作プロトテカワクチン投与時の抗体価測定および安全性の検討 適切な防除法の確立を目的に、ホルムアミド不活化プロトテカワクチンを試作し、仔牛および成牛に対する接種安全性を確認した。また抗牛プロトテカ抗体価測定用ELISA系を作製し、抗体価測定応用および診断応用への有用性を検討した。 無作為に抽出した感染牛/非感染牛血清を用いて、genotype 2破砕物を固層化抗原(1 μg/well)としたELISAの分析精度を比較し、良好な希釈直線性、再現性を得た(アッセイ内変動係数:3.7~9.1 %、アッセイ間変動係数:9.9~19.8 %)。プロトテカ感染牛、非感染牛および酵母感染牛血清の各抗体価をそれぞれ測定し、プロトテカ感染牛血清に有意な高値を確認した(p < 0.01)。設定カットオフ値を基に、試作不活化ワクチン投与牛(1.0 x 107 cells/mLおよびアジュバント)の抗体価上昇を検出した結果仔牛では、投与4週後まで抗体価の上昇を認めず、移行抗体の影響が考えられた。一方、同ワクチン一回接種の成牛では、抗体価の軽度な上昇を認めたが、カットオフ値以上への抗体価上昇および維持を得られず、一回接種法は不適と考えられた。そこで、投与濃度を増加(1.0 x 108 cells/mL)させ、初回接種4週後に第二次接種を行って測定した結果、8週後まで維持されるカットオフ値を超えた抗体価を認めた。 以上から、試作不活化ワクチンの免疫原性/安全性、接種牛の一般状態および血液検査所見の健常性を確認し、本不活化ワクチンの牛プロトテカ乳房炎防除への可能性が示唆された。 以上、得られた実績は、牛難治性乳房炎原因藻類Prototheca zopfiiの分子疫学的調査(第157回日本獣医学科学術集会,北海道大学,2014年.9月9日~12日)およびSurvey and Discussion for Medical Phycology(第58回日本医真菌学会総会. 2014年, 11月1日-2日, 横浜)にて発表を行い、現在学術論文へ投稿準備中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26度は、酪農学園において既にワクチン接種を行って、副作用の発現の有無の確認および有意な抗体価の上昇を確認できる投与摂取量の検討を行うことができた。その結果、本不活化ワクチンの牛プロトテカ乳房炎防除への可能性が示唆された。平成27年度は、26年度の再現性と抗体価の上昇継続を確認が主な目的であるため、研究計画で障害が起きるような可能性は低いと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は、ワクチンの有効期間(抗体価の上昇期間)および副作用の判定を行うため、以下の研究計画を企画した。ワクチンの作成およびELISAを用いた血清抗体価を測定は、日本大学で行い、被検牛の飼育およびワクチン接種は、酪農学園大学で行う。 1. 第1回目投与 実施日:平成27年5月第1週または2週目。1)成牛を5~10頭用意する。2)プロトテカをホルマリンで不活化後、生理食塩水で洗浄・回収し、1 X 108 /mlの藻数に調整する。これに等量の不完全フロイントアジュバンドと混合後、各群の牛へ2mlずつ頚部皮下投与する。3)投与直前および後4週間後毎に5mlずつ各実験牛の頸静脈から採血し、一般血液検査(CBCおよび生化学検査)を行うとともに血清を回収する。4)血清については、プロトテカを固相化したELISAを用いて抗体価を測定する。5)投与後の牛の一般状態を観察するとともに、ワクチン投与部位の皮膚の硬結、腫脹、疼痛の有無を確認する。 2. 第2回目投与(ブースター) 実施日:平成27年6月第1週または2週目(第1回目投与から4週後)。1)前回と同様に調整したワクチンを投与する。1 X 108 /mlのプロトテカ+アジュバント1ml 右側頚部に投与する。2)投与直前および後1週間後毎に5mlずつ各実験牛の頸静脈から採血し、一般血液検査(CBCおよび生化学検査)を行うとともに血清を回収する。3)投与後の牛の一般状態を観察するとともに、ワクチン投与部位の皮膚の硬結、腫脹、疼痛の有無を確認する。 3. 継続採血 実施日:平成27年12月まで。1)2回目投与4週間後から4週間ごとに採血し、血清を分離し、抗体価をELISA法にて測定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26度は、酪農学園大学における牛へのワクチン投与計画において、投与牛の購入が試算よりも低価格で購入できたため、次年度使用額が発生した。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額を、27年度の研究計画における成牛の購入費および飼料代として使用する予定である。特に27年度は、26年度に比較して購入牛の増数および飼育期間が長いため、必要になると考えている。
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備考 |
上記HPには、当科研費からのサポートを受けていることを表示している。
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