研究課題/領域番号 |
25450455
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研究機関 | 日本獣医生命科学大学 |
研究代表者 |
田崎 弘之 日本獣医生命科学大学, 獣医学部, 教授 (80231405)
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研究分担者 |
佐藤 稲子 日本獣医生命科学大学, 獣医学部, 助教 (70633478)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 糖尿病 |
研究実績の概要 |
犬では、先天的異常がない場合、糖尿病の発症には何らかの因子がインスリン抵抗性を増大させ、膵臓β細胞を疲弊させると考えられている。中でも、肥満とクッシング症候群ではインスリン抵抗性の2大要因と考えられている。しかし、犬において、肥満でインスリン抵抗性が増しても糖尿病を発症することはないが、クッシング症候群(血中のグルココルチコイドの上昇)から糖尿病へ進行することがある。そこで、本研究では、1) 2つの要因が惹起するインスリン抵抗性を分子レベルで解明することで犬特有の糖尿病発症メカニズムを明らかにする。2) 肥満した犬での糖尿病の発症を回避する補償作用を明らかにする。3) ヒトで肥満による糖尿病を抑制する候補因子を抽出することを目的としている。25年度、26年度を通して、得られた結果を以下にまとめる。まず、細胞でのグルココルチコイドの影響の評価するため、犬の初代骨格筋培養細胞においてグルココルチコイドの添加の有無で細胞群を分け、それぞれにインスリンとグルコースを添加し、培地中の残存グルコース濃度とアミノ酸の経時的変化をみたところ、グルココルチコイド添加群では細胞内へのグルコース取り込みが抑制される傾向と、細胞内でのアミノ酸の増加が認められた。グルココルチコイドにより、細胞内でタンパクの異化が亢進していることが示唆される。肥満犬、クッシング症候群の犬の血清中のアミノ酸、脂肪酸、生化学を分析し、多変量解析のPLS-DAを行ったところ、2群にグループを分ける14成分が明らかになった。血清については、LC-MS/MSを用いた代謝産物の網羅的分析も実施しており、複合脂質に変動が認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
グルココルチコイドを細胞に添加し、その代謝産物の動態を分析しているが、グルココルチコイド添加の有無による際だった差を検出するに至っていない。このため、インスリン抵抗性を増強した条件検討を行うことに時間を必要としている。
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今後の研究の推進方策 |
グルココルチコイド添加の時間をこれまでより延長し、さらに高濃度添加群と比較することで培養細胞中の代謝産物の影響を検討する。また、肥満で高値を示す腫瘍壊死因子(TNF)-α添加群の細胞も調整し、グルココルチコイド添加群との違いの抽出を行い、インスリン抵抗性発現メカニズムについて考察する。 肥満犬、クッシング症候群の犬の血清中代謝産物で特徴的に変化した成分を培養細胞の培地に添加し、その培養細胞中の代謝産物の変化を質量分析計で解析およびインスリンシグナリングに関与する遺伝子発現量、タンパクリン酸化への影響を解析する。これらを通じて肥満犬とクッシング症候群犬で生じているインスリン抵抗性メカニズムについて精査する。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度末に必要な細胞とその培養用培地を発注したが、会計処理に間に合わなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
すでに上記物品については納品され、研究を進捗させている。
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