研究課題/領域番号 |
25450457
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研究機関 | 麻布大学 |
研究代表者 |
恩田 賢 麻布大学, 獣医学部, 准教授 (70308302)
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研究分担者 |
佐藤 礼一郎 麻布大学, 獣医学部, 講師 (00582826)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | PTHrP / ウシ / 乳汁 / カルシウム |
研究実績の概要 |
乳牛のミネラル代謝疾患である乳熱(分娩性低カルシウム血症)の発症は、泌乳開始による乳汁へのカルシウムの喪失が最大の原因と考えられている。そのため、乳汁におけるカルシウムやリンなどの多量ミネラルの動態については多くの知見があるが、これまで全く測定されていない微量なミネラルも多く含まれる。泌乳期乳腺組織で発現が増加し、牛乳中に多量に分泌されるPTHrP(副甲状腺ホルモン関連タンパク質)が乳熱の発症に影響しているのであれば、乳汁中のミネラル濃度やその相互作用に対しても何らかの影響があると推測される。そこで、相互作用を考慮するため多くのミネラルを同時に、かつ迅速に測定できるICP-MS (誘導結合プラズマ質量分析計)を用いて、牛乳中の多元素同時測定を行った。特に多くの周産期疾患が発生する泌乳初期に注目し、牛乳汁中ミネラル濃度の変化を継時的に観察した。 その結果、これまで分娩後の動態が知られていなかった乳汁中の13種の元素の継時的変動が明らかとなった。その変動は、①カゼインなどのタンパク質濃度に影響を受けるものと、②ラクトースや乳量など浸透圧要因に影響を受けるもの、大きく2つのグループに分けることが出来た。 乳汁中のミネラルはその全てが母牛の血液に由来するため、ミネラルの血液から乳腺上皮細胞への移行、カゼインやタンパク質への修飾、その後の乳汁中への分泌に対して、PTHrPがどのように関与するのか検討する必要がある。それにはICP-MSによる多元素同時測定は有用であり、乳牛の周産期における複雑なミネラル代謝を解明理解する一助になると考えた。 この結果の一部は第157回日本獣医学会学術集会(平成26年9月10日・北海道大学)にて、「誘導結合プラズマ質量分析計(ICP-MS)を用いた泌乳初期の牛乳汁中ミネラル動態の解析」として報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.牛乳中のPTHrP 牛乳中の活性型PTHrPフラグメントの特定は困難であったが、入手した3種類の牛乳腺組織由来培養細胞のうち2つでPTHrPの遺伝子発現と培養上清中への分泌が確認された。カゼインやαラクトアルブミン、ラクトグロブリンなどの泌乳期乳腺組織に特異的な遺伝子の発現が一定しないが、カルシウム濃度の変化に対するPTHrP分泌が変化することが明らかとなり、今後この培養細胞を用いて、分泌されたPTHrPのフラグメント解析を行う。 2.乳熱牛: 牛乳と第一胃 麻布大学動物病院産業動物診療部への入院牛のうち、第四胃変位や迷走神経性消化障害などの消化器疾患に罹患したものは非臨床型の低カルシウム血症であることが多く、これらの第一胃液も継続して採取している。
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今後の研究の推進方策 |
1.牛乳中のPTHrP 牛乳腺組織由来培養細胞の泌乳期型への分化誘導方法を確立する。また、泌乳期乳腺組織と共に高度なPTHrP発現と分泌が知られる胎盤組織を帝王切開時にサンプリングしている。その際には臍帯動脈と臍帯静脈の採血も行っており、PTHrPはじめミネラルや骨代謝マーカーの測定を行い、周産期のカルシウム動態への影響を検討する予定である。 2.乳熱牛: 牛乳と第一胃 フィールドで乳熱を発症したホルスタイン種乳牛の血液検査結果と発症時の乳汁を25頭分採取した(継続中)。このサンプルのPTHrP濃度測定とICP-MSによるミネラル濃度測定を行い、昨年度に行った初産牛と経産牛のそれぞれの乳汁中濃度と比較したい。また、ミネラルの測定にはPIXE分析(Particle Induced X-ray Emission)を利用できることになったので、同様に乳汁中ミネラル濃度の測定を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者と研究分担者の使い残した金額の合計。
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次年度使用額の使用計画 |
チップやチューブ等の消耗品を購入予定。
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