本研究ではグルココルチコイドが牛の分娩時の胎盤成熟におよぼす影響を明らかにすることを目的に、自然分娩と誘起分娩時の胎盤節における二核細胞数およびTGF-β発現を比較した。胎子絨毛と母胎盤上皮細胞に局在したTGFB2およびTGFB3に対して、TGFB1は母胎盤の間質に局在した。二核細胞には、TGF-β受容体であるTGFBR1およびTGFBR2がともに局在した。二核細胞数は、プロスタグランジンF2αあるいはデキサメサゾンによる誘起分娩に比較して自然分娩時に有意に減少した。これらの誘起分娩では、TGFB1、TGFBR1およびTGFBR2のmRNA発現量も自然分娩と比較して有意差が認められた。これに対し、トリアムシノロンアセトニドとベタメタゾンの複合投与による誘起分娩では、二核細胞数が減少する個体がみられ、TGFBおよびTGFBRのmRNA発現量も自然分娩に近い傾向を示した。これらの結果より、グルココルチコイドのタイプ、用量および投与スケジュールなどの検討により、牛の分娩時の胎盤成熟を促進できる可能性が示された。
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