研究課題
基盤研究(C)
ウシの腰最長筋、腹鋸筋および中間広筋における超疲労耐久性筋線維型としてのID型筋線維の特性を酵素および免疫組織化学的に解析した。3-ヒドロキシ脱水素酵素活性の強いID型筋線維は、腹鋸筋と中間広筋に確認され、腰最長筋には認められなかった。免疫組織化学染色によって、ID型筋線維は通常のI型(IC型)筋線維と同等の遅筋型ミオシン重鎖の発現強度を示すが、ID型筋線維は遅筋型筋小胞体カルシウムイオンポンプ(SERCA2)の発現がIC型筋線維よりも発現が低く、一方ミトコンドリア内膜のカルシウムイオンチャネル阻害因子(MICU1)の発現が高いことを見出した。筋収縮の際に筋小胞体から放出されたカルシウムイオンを細胞質から回収するイオンポンプが下方制御され、カルシウムイオン濃度が一定に保たれる必要のあるミトコンドリアのイオンチャネル抑制因子が上方制御されることは、ID型筋線維が姿勢保持の持続的筋運動のために細胞内カルシウムイオンを高濃度に維持していることを示唆する(国際学会にて報告)。また、I型筋線維を支配する運動神経と同等の頻度の持続的低周波電気刺激によって、ID型筋線維の存在しないウシ腰最長筋に3-ヒドロキシ酪酸脱水素酵素活性陽性のI型筋線維を人為的に誘導できることを明らかにした。持続的低周波電気刺激はII型(速筋型)筋線維からI型(遅筋型)筋線維への筋線維型変移を誘導するが、同時に通常のI型(IC型)筋線維をさらにID型筋線維へ亜型変移させ得ることが明らかとなった。
2: おおむね順調に進展している
ウシの骨格筋における超疲労耐久性筋線維型としてのID型筋線維の特性を免疫組織化学的に解析し、これまでに知られていないカルシウムイオンチャネル制御因子の発現態様を見出した。また、持続的低周波電気刺激によって、ID型筋線維の存在しない腰最長筋に3-ヒドロキシ酪酸脱水素酵素活性陽性のID型筋線維を人為的に誘導することに成功した。次年度に実施予定の発育過程の子牛サンプルの採取を一部先行して実施した。一方、マイクロダイセクションによる筋線維型同定済み試料の解析の遺伝子発現解析については、筋線維外周に遺伝子発現部位が局在し、組織切片からの筋線維の単離切り出しが難しいことやサンプル量が微量となることなどから分析手法の条件検討段階にあり、著しい進展とは言えない。
筋線維型分布の同定済み組織切片から、マイクロダイセクションシステムにより単一筋線維型サンプルを採取し、固有の遺伝子発現様式や蛋白質発現様式について解析する。特にサーチュイン群の発現、ミトコンドリア関連のカルシウムイオンチャネル制御因子などを重点に解析を進める。また、ウシの成長過程で筋線維型が分化する際にID型筋線維への分化制御を持たらす因子を探索する。
すべて 2014 2013
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (4件) 図書 (1件)
Domestic Animal Endocrinology
巻: 48 ページ: 62-68
10.1016/j.domaniend.2014.01.007