研究課題/領域番号 |
25450463
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
北村 直樹 鳥取大学, 農学部, 准教授 (80301951)
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研究分担者 |
澁谷 泉 鳥取大学, 農学部, 教授 (50162649)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | アクセサリーローブ / アセチルコリン / ムスカリン型受容体 / 細胞内カルシウム濃度変動 / 鳥類 / 平衡感覚 / アトロピン / 電気生理学 |
研究実績の概要 |
我々は鶏アクセサリーローブ(AL)より細胞を酵素処理により単離し、パッチクランプ法を用いて、電位依存性Na+チャネルを発現した機能的なニューロンがAL中に存在すること、その興奮性がグルタミン酸やGABAにより調整されていることを明らかにしてきた。
【ALニューロンのアセチルコリン受容体】(1)孵卵14~18日目の鶏胚子より酵素処理により単離した単離ALニューロンの細胞内カルシウム濃度を蛍光顕微イメージング法により測定した。(2)アセチルコリン (ACh)は濃度依存性にALニューロンの細胞内カルシウム濃度を上昇させた。 (3)このAChに対する反応は細胞外カルシウムの除去には影響を受けず、細胞内カルシウムストアのカルシウムポンプ抑制薬のシクロピアゾン酸とムスカリン型受容体拮抗薬のアトロピンにより消失した。(4)RT-PCRによりM2, M3, M4, M5サブタイプのムスカリン型受容体mRNAがALに発現していることを確認した。(6)以上の成績から、鶏ALニューロンにはムスカリン型アセチルコリン受容体が発現しており、神経伝達物質として放出されるアセチルコリンに応答して細胞内カルシウム濃度が上昇することが明らかとなった。
【ALニューロンの機械刺激受容機構の探索】(1)単離ALニューロンの細胞内カルシウム濃度を測定しながら、灌流液の浸透圧を増減してその作用を検討した。(2)ALニューロンを低浸透圧の実験液に曝した際、細胞容積が明らかに増大することを顕微鏡で確認した。 (3)これまでのところ浸透圧を増加させた場合にも減少させた場合にも細胞内カルシウム濃度変動に顕著な変化は見られていない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
【アセチルコリン受容体機能の解析】当初計画通していた実験と実験成績の解析を完了した。その成果を学術雑誌に論文を投稿し査読を受け、掲載決定の通知を受けた。(K. Takahashi et AL., 2015, J Comp Physiol A)
【機械刺激受容機構の探索】計画立案当初に予想していた結果は今のところ得られていない。計画を立案し、申請した時点では正立顕微鏡を購入し、脊髄のスライス標本を用いて、AL組織に外部より機械的な刺激を加え、その反応を個々の細胞から記録することを計画していた。配分された予算額の都合上、正立顕微鏡を購入することは困難なので、単離したALニューロンを用いた実験に限って実施していく計画に変更した。今後、実験装置の再調整や実験条件を見直すことで、機械刺激受容機構が確認できることを期待している。
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今後の研究の推進方策 |
【AL特有の電位依存性Ca2+チャネル分子の同定と機能解析】(1)ALニューロンのCa2+チャネル電流には、その振幅が測定中に全く減弱しないという特異な性質が見られた。そこで、この特異な性質を担っている機構を解明することにした。(2)鶏ALと背根神経節よりcDNAライブラリを作成し、N型電位依存性Ca2+チャネルに特異的なプライマーセットを用いてRT-PCRを行う。現在までに、ALニューロンに特有であるとみられるPCRプロダクトが何カ所かでみられている。これらの塩基配列を決定し、ALニューロンにおける特異的なスプライスバリアントであるかを確認する。(3)スプライスバリアントが見付かった場合には、その分子をHEK293に発現し、ALニューロンのCa2+チャネル電流の再構成を試みる。(4)スプライスバリアントが見付からなかった場合には、Ca2+チャネルのアクセサリーサブユニットや相互作用のある分子の探索を行う。(5)一連の研究により、新たなCa2+チャネルの活性化調節機構が見出される可能性がある。(6)同時に、ALニューロンに発現しているネイティブな電位依存性Ca2+チャネルがどのような機構により活性が高く維持されているのかを明らかにするための実験も行う計画である。
【機械刺激受容機構の探索】(1)単離ALニューロンに機械的刺激、浸透圧刺激などを加えて、機械刺激受容機構の解明を引き続き行う。(2)細胞を灌流する装置を改良し、より速く液交換ができるようにしたり、パッチ電極を介した細胞膜への圧力の添加をより速く正確に行えるようしたりして、機械刺激受容機構の探索を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
前年度からの繰り越し金があったこと、交付申請書提出時点で計画していた国際学会への参加を見合わせたことから、次年度への繰り越し金が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
試薬、実験器具、実験動物などの消耗品費として使用する。
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