研究課題/領域番号 |
25450464
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
澁谷 泉 鳥取大学, 農学部, 教授 (50162649)
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研究分担者 |
北村 直樹 鳥取大学, 農学部, 准教授 (80301951)
浅野 淳 鳥取大学, 農学部, 准教授 (90312404)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 視索上核 / バゾプレシン / 浸透圧 / Capsaicin / 細胞内Ca2+ / パッチクランプ / TRPV1 / GIRK |
研究実績の概要 |
前年度の実験の結果、ラットSONに全長TRPV1が遺伝子、タンパクレベルで発現していることが明らかとなった。また、ラットSONニューロンは高浸透圧刺激(+50mOsml)に応答し [Ca2+]iや活動電位発生頻度の上昇を示すこと、これらの応答はTRPV1の選択的阻害薬であるcapsazepine (10 microM)で可逆的に阻害されることが明らかとなった。加えて、高浸透圧刺激に応答した全てのSONニューロンは温度を36℃にすることでTRPV1の作動薬であるcapsaicinに応答するが明らかとなった。 本年度は、過去に報告されているSIC電流の逆転電位(-42 mV, Oliet SH and Bourque CW, Nature. 364(6435):341-3,1993)と比較する目的でcapsaicin電流の逆転電位を計測したところ、逆転電位は-46mV付近であり、極めて近い値となった。また、SONニューロンで観察されたcapsaicin誘発電流の電流ー電圧関係は、浸透圧誘発性電流と同様、ほぼ直線的であった。 一方、SONで見いだされた全長TRPV1とGFPを含む発現ベクターを作成し、HEK293細胞に発現させたところ、capsaicin誘発電流の逆転電位がほぼ0mVであり、外向き清流生の電流ー電圧関係が観察された。 これらの結果から、ラットSONニューロンに発現するSICチャネルのうち少なくとも一部は全長TRPV1によって構成されているが、全長TRPV1のみで構成されるホモテトラマーではないことが明らかとなった。 さらに、浸透圧誘発性のSIC電流に対して、Gi共役型のG蛋白共役型受容体(GPCRs)によって活性化するGIRK電流がSONニューロンに及ぼす作用についても検討したところ、SONニューロンのポストシナプスに存在することが明らかとなっているGABAB受容体を介したGIRK電流活性化は、Ca電流抑制を引き起こすリガンド濃度より100倍高いリガンドでのみ生じることが明らかとなった。この結果から、SONニューロンにおいては、浸透圧が静止膜電位を規定する主要や要因となっていることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
ラット視索上核ニューロンに発現する中枢性浸透圧受容器の分子実体について、これまで存在しないと考えられてきた全長TRPV1分子が関与する新事実を得たこと、さらには、全長TRPV1分子以外の分子とのヘテロテトラマーである可能性が示唆されることが判明したため。
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今後の研究の推進方策 |
全長TRPV1分子とヘテロテトラマーを構成しうる分子の候補として、SONに見いだされた、splicing variant分子の分子同定およびその分子の異所性発現系による機能解析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
視索上核におけるTRPV1関連分子として明らかなシグナルを呈する分子が1種しか存在せず、その他の新規分子の探索に必要と考えていた経費が不要となったため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度の消耗品として使用する。
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