研究課題/領域番号 |
25450465
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
浅野 淳 鳥取大学, 農学部, 准教授 (90312404)
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研究分担者 |
山野 好章 鳥取大学, 農学部, 教授 (00182593)
竹内 崇師 鳥取大学, 農学部, 教授 (10325061)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 精子形成 / ホメオドメインタンパク質 |
研究実績の概要 |
1.精巣におけるNkx2-3, Nkx2-4, Nkx2-5発現細胞の同定 ホメオボックス遺伝子のNkx2ファミリーに属する遺伝子のうち、Nkx2-6とより近縁なNk4遺伝子群に属しているNkx2-3およびNkx2-5と、Nkx2-1により近縁なNkx2-4について、免疫組織化学による発現細胞の同定を行った。その結果、Nkx2-3, Nkx2-4, Nkx2-5はいずれも精原細胞と精子細胞の一部に発現がみられ、さらに伸長精子細胞においても発現が確認された。一方、Nkx2-6についても精原細胞に発現があるかどうか、複数の市販抗体を用いて調べたところ、伸長精子細胞より弱い発現が見られることがわかった。 2. Nkx2-6の標的候補遺伝子のプロモーター活性の解析 前年度にデータベース検索により見出したNkx2-6の標的遺伝子の候補である4遺伝子(Prm1, Akap3, Txndc8, Cylc2)のうち、Prm1遺伝子のプロモーター活性を調べた。遺伝子上流域の約300 bpをルシフェラーゼアッセイ用プラスミドpGL3-Basicに導入し、雄性生殖細胞株GC-1 spg細胞を用いてレポータージーンアッセイを行った結果、この領域の定常時のプロモーター活性はpGL3-Basicの空ベクターを用いた場合とほぼ同程度であったが、Nkx2-6発現プラスミドを用いてNkx2-6を強制発現した場合、プロモーター活性が約3~75倍上昇した。この結果は発現プラスミドの用量依存的に上昇する傾向が見られた。また、Akap3遺伝子の上流域の約400 bpを用いた場合、Nkx2-6の強制発現によってプロモーター活性が数倍上昇する傾向が見られた。以上の結果より、Nkx2-6はPrm1およびAkap3遺伝子の転写調節に関与する可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度に予定されていた研究計画のうち、Nkx2-6に近縁のNkx2ファミリーに属する遺伝子の精巣における発現細胞の同定に関しては、免疫組織化学による解析を進めることによって、Nkx2-3, Nkx2-4, Nkx2-5について精巣内での発現細胞を同定することが出来た。従って、この項目についてはおおむね計画通りに進捗していると考えられる。 また、前年度のデータベース解析によってNkx2-6によって転写調節が行われると予想された34遺伝子のうち、Prm1遺伝子とAkap3遺伝子の上流域を用いたレポータージーンアッセイを行い、Nkx2-6タンパク質によるプロモーター活性への影響を解析した。その結果、Nkx2-6はPrm1およびAkap3遺伝子の転写調節に関与する可能性があることがわかった。以上の点より、レポータージーンアッセイを用いたNkx2-6の標的遺伝子候補の解析についてはおおむね計画通りに進捗していると考えられる。 一方、Nkx2-6の標的遺伝子の候補は数多く存在し、解析が進んでいないものが残っている。さらに、実際に雄性生殖細胞内でNkx2-6タンパク質が上記の候補遺伝子上流域に結合しているかどうかの解析が進んでいない。これらの項目の解析については今後の課題となるであろう。
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今後の研究の推進方策 |
Nkx2-6が転写調節に関与する可能性がある遺伝子としてPrm1およびAkap3の2遺伝子が見出された。これらの遺伝子上流域内のNkx2-6結合予想配列を変異させたDNA断片を用いてレポータージーンアッセイを行い、Nkx2-6の転写制御作用が配列特異的であるかどうかを確認する。さらに、他のNkx2ファミリータンパク質がPrm1およびAkap3遺伝子の転写を調節する可能性を検討するために、Nkx2-6と同様に各タンパク質の強制発現条件下におけるレポータージーンアッセイを行う。 これまで、Nkx2-6タンパク質に存在するホメオドメインなどのドメイン構造と、転写調節や二量体形成といったタンパク質の機能との関連性は検討されていなかった。そこで、野生型Nkx2-6タンパク質と各種ドメインの変異体Nkx2-6タンパク質を用いた免疫沈降法やプルダウンアッセイにより、二量体形成に必須の機能ドメインを同定する。さらに、Nkx2-6とその他のNkx2ファミリータンパク質がヘテロ重合体を形成する可能性についても検討する。 マウス精巣のゲノムDNAと抗Nkx2-6抗体を用いてクロマチン免疫沈降法を行った後、回収されたマウス精巣のゲノムDNA断片を鋳型としてPCR法を行い、Prm1およびAkap3遺伝子のNkx2-6結合予想領域が増幅されるかどうか解析する。これらの解析により、in vivoの精巣においてPrm1およびAkap3遺伝子プロモーター領域にNkx2-6タンパク質が結合しているかどうかを解析する。 Prm1およびAkap3以外のNkx2-6の標的遺伝子の候補についても、上記の解析を進めて転写調節に対するNkx2-6の関与を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品費として使用する予定であったが、少顎のために次年度使用分と合算して利用するのが合理的であると判断したため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度、物品費の一部として利用する予定である。
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