研究実績の概要 |
消化管内寄生虫であるHeligmosomoides polygyrus(Hp)がマウスに感染するとT細胞はTh2細胞へと分化し、Interleukin(IL)-4やIL-13などの2型サイトカインの増大によってHpの排除が起こる。本研究では、この2型免疫応答の初期ステージに関わる細胞の働きを明らかにすることを目的とし、平成26年度は感染直後から8日目までのサイトカイン産生の変動と消化管上皮の働きについて解析した。 Balb/c (8週齢)マウスにHpを経口感染させ、感染直後から経時的(Day0,1,2,3,4,5,8)に腸間膜リンパ節と小腸を採取して種々の解析を行った。その結果、小腸では、感染直後からIL-4、IL-13、IL-33遺伝子の発現が一時的に上昇した後、減少し、さらに4、5日目から再び上昇する一方、IL-25、IFN-γ、TLR2、TLR4は変動しないことがわかった。また、HE染色による小腸組織の病理学的解析により、感染3日目からシストが形成されていることを確認した。さらに、蛍光免疫染色により、シスト周辺におけるCD4陽性細胞の集積は感染3日目から徐々に始まり、感染8日目に最大となることが確認された。一方、腸間膜リンパ節でIL-4、IL-13の遺伝子発現が始まったのは感染4日後になってからであり、CD4/25陽性細胞の割合も5日目になって上昇を示した。腸間膜リンパ節から分離した腸間膜リンパ節細胞を培養した結果、感染後4日目からIL-4の産生が起こることが確認された。LCM法により採取した小腸上皮の解析の結果、IL-33の産生は感染直後(Day0~2)に見られることも確認された。虫体のシスト形成および腸間膜リンパ節細胞の活性化以前に小腸粘膜下にサイトカイン産生を誘導する機序について、今後さらに解析する必要がある。
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