研究課題/領域番号 |
25450470
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研究機関 | 東京農業大学 |
研究代表者 |
小川 英彦 東京農業大学, 応用生物科学部, 准教授 (20339089)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 胎盤形成 / 栄養膜幹細胞 / 雌雄ゲノム / 発生・分化 / 遺伝子発現制御 |
研究実績の概要 |
胎盤の幹細胞である栄養膜幹細胞(TS細胞)はFgf4依存的に転写因子Cdx2を発現し、未分化能を維持する。雄ゲノムしか持たない雄核発生胚から樹立した栄養膜幹細胞(ATS細胞)では、Fgf4非存在下でもCdx2が発現する。そこで本研究では、ATS細胞におけるCdx2発現機構を明らかにすることにより、胎盤形成における雌雄ゲノムの役割について新たな知見を得ることを目的とした。 ATS細胞においてFgf4非存在下でCdx2の発現を維持させる原因遺伝子を特定するために、Fgf4非存在下でTS細胞と比較してATS細胞で発現が上昇する遺伝子をマイクロアレイを用いて網羅的に解析した。Cdx2に似た発現変動を示す遺伝子を抽出した結果、225遺伝子が選出された。これらの遺伝子のうち、胚発生、細胞増殖・分化に関与することが報告されている4つの遺伝子(Id2, Pdzrn, Dnmt3b, Gtf2i)を選出した。次に、これら遺伝子についてReal-time PCRにより、定量発現解析を行った。その結果、Id2のみがATS細胞において高い発現が認められた。そこで、siRNAを用いてId2の発現をノックダウンしたATS細胞におけるCdx2の発現を解析した結果、Cdx2の発現低下は、認められなかった。したがって、ATS細胞のCdx2発現にはId2が関与していないと考えられた。 TS細胞において、Fgf4依存的なCdx2に発現にはMEK-ERK経路を介したシグナル伝達系が関与している。しかし、ATS細胞ではMEK-ERK経路を阻害してもCdx2の発現低下は認められなかった。そこで、次年度はMEK-ERK以外のシグナル伝達系の阻害剤を用いてATS細胞におけるCdx2の発現に関与する伝達系を明らかにする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
マイクロアレイを用いた網羅的遺伝子解析の結果、ATS細胞におけるFgf4非依存的なCdx2発現に関与する遺伝子を特定することが出来なかったため。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの結果から、ATS細胞におけるFgf4非存在下でのCdx2の発現には、MEK-ERK経路依存的、非依存的の両方が関与していると考えられた。 MEK-ERK経路の活性化には、タンパク質のリン酸化が必要である。そこで、Fgf4非依存的なCdx2の発現がMEK-ERK経路を介しているか銅貨を検証するために、タンパク質のリン酸化状態を解析する。 さらに、ATS細胞ではMEK-ERK経路以外のシグナル伝達系によりCdx2の発現が維持されている可能性もある。そこで、様々なシグナル伝達系の阻害剤を用いて、Cdx2の発現に及ぼす影響を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度内での使用金額を当該年度の所要額(B)の範囲内に抑えたため、端数として生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
消耗品費に計上して、平成27年度に使用する。
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