胎盤の幹細胞である栄養膜幹細胞(TS細胞)は、Fgf4依存的に転写因子Cdx2を発現し、未分化能を維持する。雄ゲノムしか持たない雄核発生胚から樹立した栄養膜幹細胞(ATS細胞)では、Fgf4非存在下でもCdx2が発現する。したがって、ATS細胞ではFgf4非依存的にCdx2の発現が維持することが明らかとなった。そこで本研究では、ATS細胞におけるFgf4非依存的なCdx2発現機構を解明し、胎盤形成における雌雄ゲノムの役割について新たな知見を得ることを目的とした。 ATS細胞においてFgf4非依存的にCdx2を発現する細胞を同定するために、抗CDX2抗体を用いた免疫染色により、CDX2陽性細胞を検出した。その結果、Fgf4非存在下でCDX2を発現する細胞は、様々な大きさの核を有していた。コントロールである受精卵由来TS細胞では、Fgf4非存在下では巨核化する細胞が認められるが、CDX2は発現していない。したがって、ATS細胞では巨核化した細胞においてもCDX2が発現していると考えられた。そこで、Cdk1の阻害剤RO3306により特異的に巨核化させた細胞におけるCDX2の発現を解析した。その結果、受精卵由来TS細胞においてRO3306により巨核化した細胞ではCDX2の発現は認められなくなるのに対し、ATS細胞ではCDX2の発現が認められた。以上の結果から、ATS細胞では、巨核化した細胞においてもCDX2が発現することが明らかとなった。
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