研究課題
基盤研究(C)
平成25年度は、ブタ個体より摘出した骨格筋、脂肪組織および脂肪前駆細胞について、バイサルファイト変換したゲノムDNAからのPCR産物を用いて、次世代シーケンサーMiSeqでのウルトラディープシーケンスによるDNAメチル化解析を行った。これらの組織に加えて個体の成長、筋肉・脂肪量の増減および生活習慣病の発症にも重要な働きをする脳下垂体、肝臓で発現する転写因子、ホルモン、脂質代謝因子などの重要遺伝子についても同様にMiSeqを用いたDNAメチル化解析を行った。これにより、筋肉・脂肪への分化、個体の成長および筋肉・脂肪量を制御する200遺伝子程度のDNAメチル化解析を終了した。また組織特異的に非メチル化状態となるプロモーター領域を探索するために、CpGアイランド近傍のCpGショアに注目し、GCリッチな認識配列を持つ制限酵素による切断断片長を指標とした濃縮を試みた。これにより、ゲノム上の遺伝子プロモーター領域でDNAメチル化制御を受けやすい領域のみに焦点を当て、解析する総配列長を限定したプロモーターDNAメチル化解析を行うことで、DNAメチル化解析後のインフォーマティクス解析を容易にし、簡易型次世代シーケンサーでほ乳類のDNAメチル化解析を行うための基盤を構築した。さらにブタおよびヒト、マウスのゲノム、転写物データベースからDNAメチル化解析を行った200遺伝子を中心として、プロモーター領域に内在性アンチセンス非コード(ASnc)RNAを持つものを抽出した。
2: おおむね順調に進展している
食肉形質および生活習慣病態に関連する筋肉・脂肪および脳下垂体・肝臓の主要遺伝子を中心とした次世代シーケンサーによるDNAメチル化解析系を構築するとともに、それらの遺伝子でプロモーター領域に存在する内在性ASncRNAを同定し、ASncRNAを標的としたエピゲノム改変により食肉形質改善や生活習慣病態発症機序の解明につながる基盤を構築することが出来た。
平成26年度以降は、脂肪前駆細胞から脂肪細胞への再分化、筋肉細胞への分化転換を行った細胞について前年度に構築した次世代シーケンサーによるDNAメチル化解析を行い、脂肪・筋肉への分化に重要な遺伝子のDNAメチル化状態の変化を明らかにする。また、内在性ASncRNA発現パターンおよびタンパク質のmRNA発現パターンをRT-PCR法により解析し、組織・細胞種特異的なDNAメチル化パターンとの相関を考慮したエピゲノム改変を行ってゆく予定である。
今年度は研究開始にあたって次世代シーケンサーによるDNAメチル化解析法の確立を行ったため、解析する組織数が当初計画より少なくなったため、次年度使用額が生じた。平成25年度に解析を行わなかった組織・細胞について次世代シーケンサーによるDNAメチル化解析を行うために使用する予定である。
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Genesis
巻: 51 ページ: 763-776
10.1002/dvg.22423