ニワトリの遺伝子を組換えることで、鶏卵中に有用組換え蛋白質を生産する技術に期待が寄せられている。本研究ではニワトリで外来遺伝子を安定的に発現する技術の開発に取り組んだ。人工染色体を用いた試みは生殖巣キメラニワトリを得る事ができたが、後代に組換え体を取ることが出来なかった。一方、トランスポゾンシステムを用いることで複数コピーの外来遺伝子(蛍光遺伝子)をニワトリ染色体上の様々な場所に挿入することが出来た。本年度はまず、ニワトリが安定的な遺伝子発現を行うかを解析した。トランスジェニックニワトリ(G1)の後代(G2)を得てその胚を解析した結果、強い蛍光を認めることが出来たため、経世代的な安定発現を達成できた。また、新たな取り組みとして染色体上の特定位置に外来遺伝子の挿入が可能か否かを検討した。鶏卵への発現を想定し、卵白蛋白質の遺伝子座に対してゲノム編集が可能かを検討することとした。オボアルブミンならびにオボムコイド遺伝子座を標的としたCRISPR/Cas9法の適用を試み、ニワトリ始原生殖細胞を用いて9割程度の非常に高い効率で遺伝子変異を誘導することに成功した。また、オボムコイドに関しては変異導入した細胞を元に変異ニワトリ個体の樹立を試み、ノックアウト個体の作製を達成した。さらに、外来遺伝子の安定発現を目指したオボアルブミン遺伝子座への外来遺伝子ノックインを始原生殖細胞を用いて達成し、現在ノックイン後代を得ている。
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