研究実績の概要 |
血縁のない創設女王どうし協力してコロニーを創設するチクシトゲアリにおいて、越冬前の創設女王は巣仲間かどうかに関係なく協力するが、越冬後は巣仲間に対してより協力的にふるまうことを明らかにした。また、成熟したコロニーの敵対性をもつようになった女王の脳内オクトパミン濃度は有意に増加すること、オクトパミンを創設女王に経口摂取させると、敵対的な行動を誘導できることを明らかにした。それらの成果は、研究分担者の佐々木謙氏・小山哲史氏らと共著でこれまでに2つの論文として公表している。 ・Hashimoto A., Sasaki K., Koyama S., Satoh T. (2013) Food exchange behavior between multiple founding queens of Polyrhachis moesta (Hymenoptera: Formicidae) changes during hibernation. Applied Entomology and Zoology, 48 (2): 141-145. ・Koyama S., Matsui S., Satoh T., Sasaki K. (2015) Biogenic amine and cooperation: Octopamine regulates the disappearance of cooperative behaviours between genetically unrelated founding queens in the ant Polyrhachis moesta. Biology Letters,11: 20150206. 共同研究者に大松勉博士を加え、最終年度においては、創設女王と成熟巣の女王で遺伝子発現がどのように変化するのか、RNA-seqを用いた研究を開始し、今後さらに研究を進めていく。 創設女王にオクトパミンを経口摂取させることで行動を協力から敵対へと転換できることを利用し、平成29年度から採択された基盤研究(C)「血縁のない創設女王どうしの協力行動に見られる囚人のジレンマ・ゲーム」では、任意の女王にオクトパミンを摂取させ、行動を操作し、相手の出方に応じてどう行動を変えるのか、さらに追及していく。
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