研究課題/領域番号 |
25450485
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研究機関 | 浜松医科大学 |
研究代表者 |
弘中 満太郎 浜松医科大学, 医学部, 助教 (70456565)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 走光性 / 定位 / 視覚的エッジ / ライトトラップ / 光捕虫器 / 害虫防除 |
研究実績の概要 |
本年度(平成26年度)は[2.新しい誘引属性としての視覚的エッジの解明]を中心に課題に取り組んだ.チャバネアオカメムシとミナミアオカメムシを材料として, 5種の波長(紫外375nm,青紫450nm,青470nm,緑525nm,橙590nm)の小型LEDパネルを同時に提示することで,両種ともに,より短波長の光源を好むことを明らかにした.またチャバネアオカメムシを材料に,最も誘引性の高い紫外と,複眼の視感度の高い緑について,それぞれ単色と2波長の混色のLEDパネルを作成し,隣接して配置することで波長のエッジを作出し,カメムシが光源に誘引されたときの到達分布パターンを調べた.その結果,チャバネアオカメムシは紫外単色と緑単色がつくる波長のエッジ,もしくは紫外単色と両波長の混色がつくる波長のエッジに強く誘引された.偏光のエッジに対するチャバネアオカメムシの反応の解析では,LEDパネルに直線偏光フィルター,もしくは減光フィルターを貼付することで異なった偏光特性をもつ光源を作出し,隣接して配置することで偏光のエッジを提示した.発光面全面を直線偏光フィルターで覆った全面偏光の光源に対しては,非偏光の光源に対するのと同様に,カメムシは光源と背景のエッジに定位した.一方,偏光と非偏光,もしくは垂直偏光と水平偏光のエッジを発光面の中心に付与した光源に対しては,カメムシはそのほとんどが光源の中心部分に定位した.[3.昆虫の走光性仮説の啓蒙]については,昆虫走光性の総説及び原著論文を投稿して掲載された.加えて,市民向けの昆虫走光性の図書を分担執筆し,本研究成果の一部を利用して1件の特許出願を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度に予定していた,[2.新しい誘引属性としての視覚的エッジの解明]では,カメムシ類を材料に,波長及び偏光の視覚的エッジに対する到達分布パターンを明らかにすることができた.カメムシ類は,特定の波長,及び偏光特性を組み合わせて作出したエッジに対して強く誘引されることがわかり,予定していた計画について不足なく成果をあげることができた.天候等の影響により昨年度に検討できなかった微小性農業害虫類の定位行動とパネル型光源への到達分布パターンについても,ネギアザミウマに関して直接光パネルへの定位行動の特徴を明らかにできた.これらの成果の一部は,総説及び原著論文として学術誌に掲載され,また分担執筆の図書の出版と特許出願を行い,計画よりも多くの成果が得られた.一方,微小農業害虫類のうちコナジラミ類に関しては,実験のための十分な量を確保できなかったため,直接光パネルと反射光パネルとで到達分布パターンの比較が進められなかった.全体としては,研究は順調に進行していると判断できる.
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今後の研究の推進方策 |
当初計画していたエッジの属性として「空間軸」と「上下パターン」の昆虫への影響が,本年度(平成26年度)までの成果からおおよそ明らかになったため,次年度は,主要な課題として予定していた[2.新しい誘引属性としての視覚的エッジの解明]における「曲率」に関する選好性について特に明らかにすることとする.また,[3.昆虫の走光性仮説の啓蒙]については,原著論文の投稿を更に進める.
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次年度使用額が生じた理由 |
微小昆虫を用いた実験系の確立に時間を要したことから,予定していた微小農業害虫類(コナジラミ類,アザミウマ類)のうち,コナジラミ類に関する直接光パネルへの定位行動が観察できなかったため,計画を一部変更した.
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次年度使用額の使用計画 |
ネギアザミウマの室内実験の成功に伴って実験系は既に確立され,次年度は問題のない遂行が可能である.コナジラミ類の飼育・保持のために必要な実験消耗品,及び室内実験として予定している曲率をもつ視覚的エッジに対する分布パターンの実験に必要な光源,フィルター,低反射資材など様々な実験消耗品として使用する.
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