数種のアリと任意共生するシジミチョウ幼虫について、アリによる補食を回避し、アリを随伴させるための化学的適応機構を調べた。幼虫の体表脂質にはアリの攻撃を誘導するアルケン成分が含まれておらず、生得的にアリから発見されにくくなっていることがわかった。幼虫の伸縮突起に含まれるスクアレンは、アリに対する弱い忌避作用をもっていた。アリに強く随伴されるミヤマシジミの蜜腺分泌物は、ヤマトシジミに比べて総糖濃度が30倍以上あることに加え、天然での存在が希な三糖類を含んでいた。アリとの共生関係が強いシジミチョウほど、アリが高い摂食選好性を示す蜜を提供することで長時間の随伴行動を引き出していると考えられた。
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