本年度は,昨年度に引き続きクローニングしたカイコのミトコンドリアCa2+依存性溶質輸送体タンパク質(Bm-MSLC)をコードするcDNAの構造解析を行った。その結果,ORFは667アミノ酸をコードしており,分子内にCa2+の結合領域であるEF-ハンドモチーフが確認された。また,ミトコンドリア溶質輸送体タンパク質のスーパーファミリーに属するタンパク質に共通に確認されるモチーフとして「signature motif」が分子内に3カ所に確認された。 Bm-MSLCの特異的プライマーを調製し,遺伝子発現の変動を,塩酸処理休眠卵から抽出したmRNAを用いてRT―PCRにて詳細に解析を行った。その結果,塩酸処理を行っていないコントロールでは発現が認められなかったが,塩酸処理卵で,処理直後から48時間目までの調べた全てにおいて発現が確認された事から,塩酸処理の刺激により比較的短時間でBm-MSLC遺伝子の発現が誘導される事が示唆された。 また,Bm-MSLCの機能解析の一環として,リコンビナントBm-MSLC(rBm-MSLC)の発現と精製も試みた。その結果,精製したrBm-MSLCのSDS-PAGE上での分子量がおよそ74000 Daであり,N末端に付加しているヒスチジンタグの分子量を考慮すると,アミノ酸配列から予想した分子量とほぼ一致した。この精製したrBm-MSLCを用いてポリクローナル抗体を作成したところ,抗原を認識する特異的抗体が作成できた事を確認した。現在,この特異抗体を用いた免疫組織化学の準備を進めている。
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