研究課題/領域番号 |
25450495
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
姜 東鎮 弘前大学, 農学生命科学部, 准教授 (20409080)
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研究分担者 |
石井 康之 宮崎大学, 農学部, 教授 (50211032)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 除染効率向上手法 / 除染率 / 腐植量 / 高密度 / 刈取り回数 / 放射性カリウム競合 |
研究実績の概要 |
放射性セシウムの吸収率向上法を確立するため,一作目の平成25年度に引き続き,2作目の平成26年度にも除染実証試験を行い,下記の結果が得られた. ①ネピアグラス乾物収量や除染率は1作目と同様に牧草地に比べて腐植量が比較的多い水田の方が高く,137Cs除染率は土壌性質の差異よりも土壌中の腐植量に大きく影響されることや,密植することにより除染率が向上すること,年2回刈取りが年1回刈取りより効果が高かったことが2作目の平成26年度の結果からも明らかになった. ②剥ぎ取った高レベル汚染表土(137Cs:平均45890Bq/kg土壌)の除染可能性をポット条件で調べた結果,ポット条件であるため,茎葉部乾物収量は圃場レベルに比べて少ないが,吸収率が高く(137Cs:平均3576Bq/kg乾物),高レベル汚染土壌での除染にも十分に適用できると考えられた. ③ポット条件(異なる接種菌密度)や圃場レベル(根元接種)で菌根菌接種手法を改善しても,いずれもネピアグラスの根における感染率は高かったものの,ネピアグラス茎葉部乾物収量と除染率に及ぼす効果がなく,イネ科作物に生育促進効果あるとされる供試共生菌根菌種(Gigaspora margarita主体)にネピアグラスの生育促進効果(除染効果)は考えにくいことがわかった. ④貯蔵温度や栄養体に含まれている水分を調整し,長期間保存を行ったところ,栄養体のカビ発生率を大きく抑制したものの,貯蔵5ヶ月後の栄養体からの出芽は見られなかったため,さらなる手法改善が必要と考えられる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
放射性セシウムの吸収率向上法を確立するために行った平成26年度の除染実証試験の結果が下記の通りに得られたため,概ね順調であると考える. ①平成25年度の1作目と同様にネピアグラス乾物収量や除染率は,腐植量が多い土壌で高く,株間を狭くした密植区で高く,年2回刈取りで高いことが2作目の平成26年度の結果からも明らかになった.従って,今後,ネピアグラスで行う農地除染には腐植量,密植,年2回刈取りの手法が有効であることを明らかにした. ②表土剥ぎ取りで大量発生する高レベル汚染表土(137Cs:平均45890Bq/kg土壌)を,ネピアグラスで除染が可能かをポット条件で調べた結果,茎葉部乾物収量は圃場レベルに比べて少ないが,吸収率が極めて高く(137Cs:平均3576Bq/kg乾物),高レベル汚染土壌での除染にも適用できると考えられた. ③菌根菌接種手法を改善し除染効果向上を調べたポット条件(異なる接種菌密度)や圃場レベル(根元接種)のいずれもネピアグラスの根における感染率は高かったものの,ネピアグラス茎葉部乾物収量と除染率に及ぼす効果がなく,イネ科作物に生育促進効果あるとされる供試共生菌根菌種(Gigaspora margarita主体)にネピアグラスの生育促進効果(除染効果)は考えにくいことがわかった. ④貯蔵温度や栄養体に含まれている水分を調整し,長期間保存を行ったところ,栄養体のカビ発生率を大きく抑制できたが,貯蔵5ヶ月後の栄養体からの出芽は見られなかったため,さらなる手法改善が必要と考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
研究3年目の平成27年度もこれまでに実証試験を行った浪江町警戒区域内の水田跡地と牧草地跡地の2ヶ所で引き続き除染実証試験を行う予定であり,平成27年度は下記の3点に重点をおいて進める. ①実証試験3年目の平成27年度には,土壌中の40Kが2年目よりさらに減少したことで,同じ実証試験区において作付けの回数を重ねていくにつれて土壌中の40Kの減少がネピアグラスの地上部乾物収量と137Csの除染率にどのような変化をもたらすのかを解明するとともに,1年・2年目の実証試験に肥料としてカリウムを施与しなったため,実証試験2年目ではネピアグラスの生育抑制が現れ始めたことから,除染率が下がらない範囲でのカリ肥料の施用量を明らかにする.②浪江町と浪江町請戸川土地改良区の要請により,国の除染が困難な帰還困難区域を始め,避難解除準備区域の農地除染をネピアグラスを用いて開始する.③安定的な苗供給のための冬期保存技術を確立する課題については,貯蔵期間中,最もカビの発生が少なかった栄養体の水分含量を中心とし,引き続き,ネピアグラス栄養体の冬期保存手法を改善していく. 一方で,2ヵ年にわたって実施した菌根菌による除染効果向上については,接種手法を改善し行った平成26年度のポット条件(異なる接種菌密度)や圃場レベル(根元接種)で,いずれもネピアグラスの根における感染率は高かったものの,ネピアグラス茎葉部乾物収量と除染率に及ぼす効果がなかったことから,ネピアグラスにおける供試共生菌根菌種(Gigaspora margarita主体市販菌根菌)による除染効果向上は考えにくいため,平成27年度の共生菌根菌接種試験は実施しない予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
分担者の支出都合により残額が発生
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次年度使用額の使用計画 |
分担者の物品費として使用
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