研究課題/領域番号 |
25450504
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研究機関 | 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
西村 誠一 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 中央農業総合研究センター企画管理部業務推進室企画チーム, 主任研究員 (70354090)
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研究分担者 |
駒田 充生 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 中央農業総合研究センター土壌肥料研究領域, 上席研究員 (30354046)
井原 啓貴 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 中央農業総合研究センター土壌肥料研究領域, 主任研究員 (00370502)
米村 正一郎 独立行政法人農業環境技術研究所, 大気環境研究領域, 主任研究員 (20354128)
大浦 典子 独立行政法人農業環境技術研究所, 物質循環研究領域, 主任研究員 (50354022)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 一酸化二窒素 / ペレット堆肥 / 硝化 / 脱窒 / 有機物 / 局所的嫌気部位 |
研究実績の概要 |
密閉容器を使った土壌培養実験において、一酸化二窒素(N2O発生)メカニズムについて考察した。 一般に硝化のときのN2O割合(蓄積した硝酸態窒素に対する発生したN2Oの割合)は0.1%前後とされている。硫酸アンモニウム(硫安)および尿素ではアンモニア態窒素は施肥後14日目までにほぼ全て硝酸態窒素に硝化され、積算のN2O割合は両者とも約0.1%であった。また、一時的に土壌中に亜硝酸態窒素の蓄積が認められ、亜硝酸酸化細菌の活性が高まるまでの期間に一時的に亜硝酸が蓄積したことが示唆された。一方、家畜ふん堆肥由来の有機態窒素を含む豚ぷん堆肥ペレットおよび市販発酵鶏ふんでは、硫安・尿素より大幅に高いN2O発生が観測されたが、このときの亜硝酸態窒素濃度は非常に低かったことから、有機物を分解する従属栄養細菌が亜硝酸をすみやかにN2Oに還元しているとみられた。 尿酸分解を抑制した鶏ふん堆肥を原料とした鶏ふん堆肥ペレット、これに尿素を付加した鶏ふん堆肥ペレット、硫安溶液を付加した豚ぷん堆肥ペレットでは、有機物の施用量が少なくなり従属栄養細菌の活動が弱まるため,培養期間を通じたN2O割合は比較的低い値(硫安・尿素に近い値)となったと考えられる。 通気式のガスフラックス連続測定システムを用いて、ペレット堆肥施用後にマルチフィルム被覆をした土壌およびマルチ被覆無し土壌からのN2Oおよび一酸化窒素(NO)の発生量を、それぞれ赤外線分析計および化学蛍光法の分析計により連続測定した。N2O, NO放出量は堆肥施用後にピークを迎え2週間以内にN2Oの発生量は低くなった。マルチフィルムを施した区では大幅にN2O(およそ10%程度にまで)およびNOの発生量が削減された。マルチフィルムを施用することにより、施肥土壌に降水が直接侵入しなくなり、脱窒によるN2O生成の促進が緩和され、N2O発生が低減されたと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
密閉法による土壌培養試験のデータ解析を進め、特に亜硝酸の一時的な蓄積を考察することにより、ペレット堆肥でのN2O生成メカニズムについて有力な仮説を示すことができた。 一方、通気法によるN2O, NOフラックスの連続測定について、土壌水分等の最適な測定条件の設定および土壌試料の調整に当初の見込みより多くの試行錯誤・予備実験を重ねることとなったため、本試験の開始が予定よりも遅れた。
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今後の研究の推進方策 |
通気法によるフラックス連続測定について、今年度は十分なデータを得ることができなかったので、次年度も引き続き測定を行い、様々な土壌・環境条件の下でのフラックスデータを取得する。 当初予定していた窒素の同位体測定については、上記の理由、および研究代表者が異動になったことに伴って分析機器を利用することが困難になったことから、行わないこととする。
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次年度使用額が生じた理由 |
ガス分析計および無機態窒素分析計関連の消耗品の支出を他の分析計使用者と折半することにより、当初の計画よりも支出が低く抑えられたために、残額が発生した。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額396,210円は、通気法によるガスフラックス測定のための部品(チャンバー、配管部品等)の購入に使用し、次年度に請求する研究費と合わせて研究計画遂行のために使用する。
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