平成28年度には、①業務商業系市街地における公開空地と都市公園との一体的整備・管理運営、②市街地縁辺部における企業による樹林地保全に関する調査成果の精緻化を目的とし、文献資料調査、関係者インタビュー他の現地調査を実施した。 ①では、東京都区部の42事例を抽出し、公開空地等と都市公園との敷地境界の構造等に加え、管理運営の実態や関係者の認識等を把握した。その結果、イベント等の一体的な利用実態、管理運営面における官民の役割分担・連携の実態、一体的整備・利用や官民連携の効果・課題等が明らかになった。 ②では、地場産業を構成する企業群を中心に構成された団体が実施する、地域に根差した森林保全活動について検討した。広島県東広島市における事例を取り上げ、森林保全活動から地域課題の解決のための活動への展開、活動における共通利益・目的の設定の有効性、活動メンバーや資金に係わる安定的な活動基盤の構築等の観点から、地場産業を中心とした地域連携システムの可能性や課題等を明らかにした。なお、当該研究の成果の一部は、審査の結果、日本造園学会の研究論文として採択され、J-Stage上で公開された。 研究期間全体を通じて、工業系市街地、業務・商業系市街地、市街地縁辺部・農村等を対象に研究を実施した。その結果、企業が所有する工場緑地、公開空地等の整備・一般公開を通じたパブリックオープンスペースの形成と、地域の既存緑地(樹林地、農地等)の再生・公開に対する企業の支援やそれに基づくパブリックオープンスペースの形成の実態を把握することができた。また、その成果をもとに、パブリックオープンスペース形成における企業の役割、行政や地域住民・市民団体との連携システムの構築、地域マネジメントや緑のまちづくりへの展開方策等に関する課題や今後の可能性について考察した。
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