研究概要 |
本研究は,既発表(Tomoki Ogawa, Yoshiaki Kameyama, Yumiko Kanazawa, Kojiro Suzuki, Masataka Somego (2012) Origins of early-flowering cherry cultivars, Prunus x kanzakura cv. Atami-zakura and Prunus x kanzakura cv. Kawazu-zakura, revealed by experimental crosses and AFLP analysis, ScientiaHorticulturae 140: 140-148,和訳:作出試験とAFLP 分析によるアタミザクラとカワヅザクラの親種判定)に続き,国花であるサクラの雑種の保護のために,また新しい雑種の作出のために,多くのサクラの雑種の親種を明らかにし,分類学的な位置付けの整理を行うものである。これまでアタミザクラは,カンヒザクラとヤマザクラの雑種,カワヅザクラはカンヒザクラとオオシマザクラの雑種であることを明らかにした。本研究では,さらにその他の雑種の親種を,形態学的(葉や花の形態,花粉の特性),または遺伝的(DNA 分析)に,さらに作出実験を行いながら作出の可能性(受精できる確率)なども調べ,鑑定,整理することを最終目標とする。1年目は特にこれら雑種の親種について,すなわちヤマザクラやカンヒザクラ,エドヒガンの地域間の個体差などを明らかにするために,沖縄諸島や四国,九州南部にて現地調査を行った。現地調査では,対象個体の生育調査として幹周や樹高,枝張り,健全度,及び生育環境条件について明らかにした。あわせて本年度(2014年度)に行う分析用の葉の採取も行った。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き関東地方を中心として,さくらの雑種や親種にあたる巨木の現地調査を行うと共に,室内にて葉や花に関する分析,およびDNA分析を充実させる。葉の形態については,雑種と思われる個体の大きさ(長さ)や特徴,花の形態については,雄しべやめしべの特徴,花粉の特性分析を行う。花粉の特性分析では,雑種であれば花粉の充実率が下がり,花粉粒径に変異が大きくなる傾向があるので,これを指標にして雑種であるか否かの判定を行う。DNA分析ではAFLP法を用いて,アタミザクラ(カンヒザクラ*ヤマザクラ),カワヅザクラ(カンヒザクラ*オオシマザクラ)以外の雑種について,親種を探る。DNA 分析によって対象種(雑種,カンヒザクラ,ヤマザクラ,オオシマザクラ等)の類縁関係を調べる。DNA 分析は,ゲノム全体を網羅的に探索でき,あらゆる植物に応用可能なAFLP 分析を用いる。各対象種における最適なDNA 抽出方法,予備増幅及び選択的増幅プライマーの探索を行った後,野外集団から採取した試料でAFLP 分析を行う。分析によって得られたフラグメントの有無(バンドパターン)は,主座標分析による多変量解析,Hybrid index の算出,ベイズ推定によるHybrid class(例えば,F1, F2, BC など)の特定に使用する。これにより,野外植物における種間雑種の形成がどの程度,どのような様式で生じているのかを解明する(担当研究分担者亀山慶晃)。
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