研究課題/領域番号 |
25450515
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研究機関 | 大阪教育大学 |
研究代表者 |
鈴木 剛 大阪教育大学, 教育学部, 教授 (10314444)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 染色体工学 / ソマクローナル変異 / 混数性 / タバコ / 細胞分裂 |
研究実績の概要 |
本申請は、同じ個体において染色体数の違う細胞が混在する「混数性」について、染色体の分配異常が引き起こされる原因を分子レベルで明らかにするものである。我々が独自に明らかにしてきたタバコ植物の混数性現象について、遺伝子発現・DNAメチル化の統合的な解析を行って原因遺伝子候補を絞り込むとともに、染色体分配の動態を免疫染色などにより詳細に解析し、さらには原因遺伝子候補の発現を変化させた形質転換植物により機能を証明することを目的としている。本研究は「ダイナミックな染色体挙動」という基礎細胞遺伝学的に 重要な知見を与える他、応用的には植物育種学の分野で重要な「ソマクローナル変異の分子機構解明」の基盤を作ることかできる。平成27年度は、「Bisulfite sequencingによる候補遺伝子プロモーター領域のDNAメチル化解析」と「CRES-Tベクターを用いた候補遺伝子の転写因子機能を抑制した形質転換タバコ作出」の2点について、主に研究を行った。 「Bisulfite sequencingによる候補遺伝子プロモーター領域のDNAメチル化解析」については、2種類の候補遺伝子(転写因子)のプロモーター領域について引き続きDNAのメチル化を調べた。現在までのところ、プロモーターのコア部分ではメチル化程度に差が認められているものの、プロモーター上流には大きな差は認められなかった。また、「CRES-Tベクターを用いた候補遺伝子の転写因子機能を抑制した形質転換タバコ作出」に関しては、2種類の候補遺伝子のシロイヌナズナオーソログのCRES-Tコンストラクトを分与していただき、混数性個体における転写因子機能抑制を目指し形質転換タバコを作成した。現在までの試みでは、混数性個体のリーフディスクの脱分化・再分化時の生育具合が良すぎて選抜の抗生物質の効きが悪く、形質転換効率が悪いため、現在改善を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成27年度に2種類の候補遺伝子のBisulfite sequencingによるメチル化DNAの解析についてほぼ完了したが、他の候補遺伝子についても現在2種類ほど注目すべきものが追加され、引き続き継続する必要がある。これに関して、労力がかかるため、多少計画に遅れが生じている。しかしながら既に先に絞り込んだ2種類の候補遺伝子については、平成27年度から遺伝子導入を開始しており、順調に成果が得られつつある。
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今後の研究の推進方策 |
Bisulfite sequencingによるメチル化DNAの解析については、追加した2種類の候補遺伝子について、平成28年度も引き続き実験を行っていく。既に先にメチル化 DNA解析を終えた2種類の候補遺伝子については、機能解析として「CRES-Tベクター」を利用して、平成27年度から遺伝子導入を開始しており、平成28年度以降、順次表現型の確認などを行っていく予定である。CRES-Tによるシロイヌナズナオーソログを用いた転写機能抑制がうまくいかない場合には、タバコ本来の遺伝子でCRES-Tコンストラクトを作成するとともに、過剰発現コンストラクトも作成し、それらを遺伝子導入していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
Bisulfite sequencingを次年度まで継続することになったため、PCR・クローニング・シークエンスに関連した試薬代金などを繰り越した。また、形質転換実験が遅れているため、表現型解析に用いる分子生物学試薬について、平成27年度は少額使用となった。また、論文発表に伴い、カラー印刷代・別刷り代(20万円ほど)を平成27年度で支出予定であったが、出版が遅れ次年度に繰り越しとなった。このような事が重なり、70万円ほどを次年度に繰り越している。
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次年度使用額の使用計画 |
今後は形質転換実験を順次行っていくため、それに必要な物品を購入していく予定である。表現型解析の一環として、タバコのトランスクリプトームを理解するために、外部委託を行う予定である。また、引き続きBisulfite sequencing解析を行うための分子生物学試薬・キットなどの消耗品の購入を予定している。塩基配列決定については、今後も外部委託をするほうが効率的かを随時判断しながら助成金を使用していきたい。
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