研究課題
本申請は、同じ個体において染色体数の違う細胞が混在する「混数性」について、染色体の分配異常が引き起こされる原因を分子レベルで明らかにするものである。我々が独自に明らかにしてきたタバコ植物の混数性現象について、遺伝子発現・DNAメチル化の統合的な解析を行って原因遺伝子候補を絞り込むとともに、染色体分配の動態を免疫染色などにより詳細に解析し、さらには原因遺伝子候補の発現を変化させた形質転換植物により機能を証明することを目的としている。本研究は「ダイナミックな染色体挙動」という基礎細胞遺伝学的に 重要な知見を与える他、応用的には植物育種学の分野で重要な「ソマクローナル変異の分子機構解明」の基盤を作ることかできる。平成29年度は、「CRES-Tベクターを用いた候補遺伝子の転写因子機能を抑制した形質転換タバコの解析」を継続するとともに、最終年度として様々な成果の総括を行った。候補遺伝子の1つの転写因子(6600)遺伝子については、抑制コンストラクトを混数性個体に導入した形質転換体では核型が安定しなかったが、正常個体に導入して転写因子機能を抑制した形質転換体のT2, T3世代を解析したところ、塩ストレス耐性と乾燥ストレス耐性が有意に弱まっていることが分かった。この結果から、6600はゲノムショック時のストレスによって誘導される転写因子遺伝子かもしれない。このように混数性個体で転写とDNAメチル化に変化がある遺伝子は、ゲノムショックとストレス応答に関連している可能性がある。今後はより多くの遺伝子について機能解析を行うとともに、メチル化関連遺伝子の変異体やトランスポゾンとの関連を調べるなどの工夫が重要となる。混数性の表現型を押しつぶし以外でも詳細に確認した上で、明らかになった部分の論文発表を行っていく予定である。
すべて 2017
すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件) 学会発表 (1件)
Nature Plants
巻: 3 ページ: 17096
10.1038/nplants.2017.96