本研究では、申請者らが先行研究において発見した植物パラコート/ポリアミントランスポーターAtRMV1 (Arabidopsis thaliana Resistant to Methyl Viologen1)/AtLAT1 (L-type amino acid transporter 1) について詳細な解析を行い、植物におけるポリアミン輸送の分子メカニズムと生理機能を明らかにすることを目的とする。 本年度は、AtRMV1/AtLAT1の輸送基質として、新たにチアミンが輸送されることを見出し、これまで観察されてきたパラコート耐性野生株の耐性メカニズムが、チアミンとパラコートとの輸送競合によって生じていたことを明らかにした。また、シロイヌナズナ野生株に見出されるアミノ酸多型が、チアミンとパラコートの基質特異性に影響を及ぼすことを明らかにした。AtRMV1/AtLAT1と低い相同性を示す大腸菌の輸送体との立体構造比較から、輸送基質の認識に関わると予想されるAtRMV1/AtLAT1の中の膜貫通ドメインを同定し、このドメインに変異を持つ野生型系統においては、基質の種類にかかわらず、AtRMV1/AtLAT1の輸送体の輸送活性自体が低下していることが明らかになった。さらに、前年までに解析を進めてきたLATファミリー遺伝子の変異体に関して、塩に高感受性を示す表現型に加え、新たに発芽初期における生育において野生型とは異なる形質を示すことを見出し、変異体における遺伝子発現変動の解析を行った。
|