天然から得られる有望な生物活性化合物のなかでも、同一炭素骨格上に異なる置換様式の酸素官能基を有するものは数多く知られている。今回、糸状菌Cladorrhinum sp. KY4922から単離され、強力な抗腫瘍活性を示すMPC1001類および、トリカブトから単離され、TTX感受性ナトリウムイオンチャネルを活性化するアコニチン類を標的として合成研究を行った。 MPC1001類の合成については、研究代表者が以前に報告した、アセチルアラノチンの合成中間体をジケトピペラジンへと導いた後、ジヒドロオキセピン上のヒドロキシ基の立体化学を反転させた。別途合成したカルボン酸と縮合して得られたエステルに対して、TBAFを作用させたところ、分子内アルドール反応が進行し、マクロラクトンを収率71%で得た。得られたアルドール体は、新しく生成した二つの不斉炭素のうち、いずれも天然物とは逆の立体配置を有していたため、アルコールの酸化とトリスルフィドの段階的な導入を経て、Luche還元を行い、望みの立体化学を有する第二級アルコールへ導いた。最後に、ジスルフィドを構築してMPC1001Bの合成を達成した。 アコニチン類については、文献既知のbeta-ヒドロキシエステルからBirch還元を含む5工程の変換を経て、エノンを合成した。次に、LDAとTBSOTfを順次作用させ、シロキシジエンへと変換した後、2-クロロアクリロニトリルとの分子間Diels-Alder反応によりビシクロ[2.2.2]骨格を有する化合物を単一の異性体として得た。続いて、第二級アルコールへ誘導後、メシル化とシリカゲルを用いたWagner-Meerwein転位反応によりアコニチンの部分骨格を構築した。さらに、合成中間体を別途変換することも検討し、酸化的炭素-炭素結合形成を鍵とするアコキレアリン骨格の部分構築に成功した。
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