昨年度までの研究成果より、反応基質として各種複素芳香族化合物由来のジエンが適用できることがわかっているが、芳香族性を持たない複素環融合型ジエンの適用が未検討課題として残っていた。本ジエン化合物群は芳香族化合物由来のジエン化合物よりも不安定だったため、合成ルートの最適化と精製方法の確立、そして不斉反応条件の最適化を要したが、本プロジェクトで開発したホルミウム触媒が目的の反応を円滑に進行させることを確認した。このようにHo触媒は不安定な基質を用いる反応系にも適用可能な汎用性を持ち合わせていることがわかったが、未だ触媒構造については未知である。三次元的な構造の解明のために今後も継続的に検討していく。 また、複素環融合型ジエンを用いるDiels-Alder反応において、ジエノフィル基質は鎖状E-オレフィンに限定されていた。幾何異性がZ体に固定される環状オレフィンをジエノフィル基質として適用すると、残念ながらHo触媒では反応性・立体選択性共に低いことがわかった。しかし、不斉炭素を持つ光学活性なジエノフィルを用いたジアステレオ選択的な反応系においてはSc(スカンジウム)触媒が有効であることを見出した。Diels-Alder成績体はStrychnine等のアルカロイドの合成中間体として利用可能であると考えており、現在全合成研究を進めている。
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