研究課題/領域番号 |
25460007
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
占部 大介 東京大学, 薬学研究科(研究院), 講師 (80503515)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 有機合成化学 / 天然物 / 全合成 / 生理活性物質 / ステロイド / ラジカル反応 / カップリング |
研究概要 |
本研究では、生物活性物質(天然物リガンド)として有望な鋳型(炭素骨格)を有するステロイド類を、精密有機合成化学により実用的に供給する方法論の確立を目指している。平成25年度は、AB環およびCD環がそれぞれシス縮環し、D環上にブテノリドを有するNa/K-ATPase阻害剤ウアバインの全合成研究を行った。その結果、ウアバインのアグリコンであるウアバゲニンの収束的全合成に成功した。4つのヒドロキシ基とエノン構造を有するAB環と2つのケトンを有するD環を、アセタール形成とラジカル反応によって連結した後、分子内反応に付した。その結果、5つのヒドロキシ基と2つのケトンを有するウアバゲニンの高酸化度ステロイド骨格を構築することに成功した。得られた化合物のC7位ケトンを脱酸素化により除去した後、メチルアセタールのビニルエーテルへと変換、オゾン酸化、Birch還元により重要中間体へと導いた。最後に、ブテノリドをStilleカップリングにより導入し、立体選択的なC16-C17位二重結合の水素添加を経てウアバゲニンの全合成に成功した。ウアバゲニンの全合成は極めて困難であることが知られており、その成功例はこれまで世界で一例のみであった。今回、本研究により、2例目となる全合成に成功した。本研究成果のインパクトは極めて大きいと言える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
ウアバゲニンの全合成を達成できたことで、高酸化度ステロイドの一般性の高い合成経路の開発に成功したといえる。本成果は、今後の研究を極めて大きく推進する成果である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、ウアバゲニンの全合成経路を基に、高酸化度ステロイドの一種であるトウセンダニンの全合成研究を遂行する。トウセンダニンは未だに全合成例が報告されておらず、極めて合成困難な化合物である。今年度の研究成果を基にすることで、既に我々が合成に成功している中間体から、トウセンダニンを全合成する予定である。具体的には、ラジカル反応とアルドール反応を組み合わせた高酸化度ステロイド骨格の構築に焦点を当て、トウセンダニンのステロイド骨格構築にまず焦点を当てる。次いで、フランの導入と官能基変換を経てトウセンダニンを全合成する。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究室に現存する消耗品などを利用したため、予定より支出が抑えられた。 利用内訳の内容は申請時と変わらない予定であるため、有機合成試薬や有機溶媒などの消耗品購入に充てる。
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