研究課題
平成27年度は、トウセンダニンの合成研究に取り組んだ。前年度までの結果から、分子内アルドール反応による第4級炭素構築は困難であると考え、合成計画を変更した。具体的には、ラジカルタンデム反応を利用したトウセンダニンのステロイド骨格構築に取り組んだ。ヨードアダマンタンをトウセンダニンA環のモデル基質とし、異なるラジカル受容基を分子内に2種類有するD環を用いてラジカル反応を行った。ヨードアダマンタンに対してAIBN存在下、水素化トリブチルスズを作用させて橋頭位ラジカルを発生させた。生じたアダマンチルラジカルは、D環が有する2つのラジカル受容基のうち、エステルによって活性化させれたラジカル受容基と選択的に反応した。その後、エステルのα位に生じたラジカルが分子内に存在するもう一方のラジカルの受容基と反応し、6員環が形成される事を見出した。結果として、A環とD環の連結と共に、C環が構築されるタンデム反応を開発する事に成功した。本反応の収率は、D環の構造に大きく左右されることが分かった。すなわち、一回目のラジカル反応で機能するラジカル受容基としては、ジエステル構造、2回目に機能するラジカル受容基としてはアルキル基のみで置換された単純オレフィンが最適であることが分かった。また、ラジカル反応の条件は、水素化トリブチルスズを高温下で作用させる条件が最適であった。当初の合成計画とは異なるものの、本反応によって、トウセンダニン合成に適用可能な3環性骨格構築法を開発出来た。
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すべて 雑誌論文 (11件) (うち査読あり 11件、 謝辞記載あり 6件) 学会発表 (18件) (うち国際学会 7件、 招待講演 2件) 備考 (1件)
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