研究課題/領域番号 |
25460008
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
生長 幸之助 東京大学, 薬学研究科(研究院), 助教 (00583999)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | C-H活性化 / 酸化 / 酸素 / 配向活性化基 |
研究概要 |
本研究提案では、「遠隔位sp3炭素-水素結合を標的とした酸化的化学変換」を進行させる新規合成触媒の設計及び開発を主目的とする。この触媒技術を基盤とし、現状の医薬リード創出プロセスおよび生命科学研究が抱える限界を打破、ひいては広く創薬化学全般へとインパクトを与えていくことを究極的な目標とする。 今年度は「ユビキタス官能基認識部位を通じた、遠隔位C(sp3)-H活性化触媒の開発」を目標とした。 C(sp3)-H活性化に実績のあるN-ヒドロキシフタルイミドから誘導される新規配向活性化基をアルコールに共有結合させ、酸素を用いるC(sp3)-H結合酸素化反応を検討した。その結果、ヒドロキシ基γ/δ位C(sp3)-HがC=OもしくはC-O結合へと選択的に酸素化される条件を見いだすことに成功した。コバルト-マンガン共触媒系をトリフルオロエタノール溶媒で用いることで、最も活性化難度が高いとされる非環状2級C(sp3)-H結合がケトン(C=O結合)へと収率良く変換された。さらにはNOx条件下で反応を行うことで、γ位/δ位にある非環状2級C(sp3)-H結合がニトロキシ基置換された化合物が得られた。これはケトン(C=O)ではなくアルコール(C-O)の酸化度をもつ化合物が選択的に得られることを意味している。より直裁的なポリオール合成法へと発展していくことが期待される。本法ではアルコールα位・β位・δ位よりも遠隔位は全く反応せず、γ/δ位C-Hのみが変換されるという特徴を有する。また配向活性化基は穏和な還元条件で簡便に除去でき、ポリオール化合物を良好な収率で与えた。 以上の成果は代表者をCorresponding Authorとする原著論文として投稿準備中にある。また関連する学会発表も複数回行うことができた。他の併走プロジェクトについても原著論文および学会発表として公表することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
変換困難とされる非環状2級C-H結合を標的とする酸素酸化に有効な配向活性化基を独自開発することに成功し、目標実現に向けた基礎的知見を多数蓄積することができた。 当初目標としていた触媒化については未達であるものの、今年度の研究で得られた成果は次年度以降の研究進展にそのまま援用可能なものである。大きな方針変換を伴うことなく研究は継続可能であり、良好な進捗状況にあると自己評価している。
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今後の研究の推進方策 |
現在までの反応条件ではN-オキシルラジカル配向活性化基が基質と同量必要となってしまうことが制限となっている。 基質との認識相互作用をこれまでの共有結合から動的可逆結合に代替する戦略により、配向活性化を触媒化する取り組みを重点的に行っていきたい。 また今回開発した配向活性化基を用いて、酸素化以外の形式をもつ反応開発、位置選択性のスイッチング検討にも取り組んでいく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初設計を行っていた新規配向活性化基の機能実証、および触媒化を見据えて検討を行っていた。しかしながら予想外の配向活性化基の不安定性などに直面し、触媒量への低減が難しいことが明らかとなった。次年度以降はより多種多様な触媒構造を合成し、精密な構造最適化に取り組む必要があると判断、主に消耗品相当額を次年度使用相当分に割り当てることとした。 共通機器として利用している、合成化学研究に必須となる分析機器類(核磁気共鳴装置、質量分析装置、赤外分光装置など)、真空ポンプなどの定期メンテナンス費、修理費、有機合成研究における必須消耗品(薬品類、溶媒、不活性ガス、ガラス器具、手袋などの保護具)はルーチンの実験環境維持に必須となるため、計上した。国内学会・国際学会出席目的の旅費、論文別刷・英文校閲費(その他の項目)なども前年度と同様に計上する。
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