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2013 年度 実施状況報告書

短いペプチドオリゴマーを用いた、水中での強固な規則構造の構築と制御

研究課題

研究課題/領域番号 25460009
研究種目

基盤研究(C)

研究機関東京大学

研究代表者

尾谷 優子  東京大学, 薬学研究科(研究院), 助教 (60451853)

研究期間 (年度) 2013-04-01 – 2016-03-31
キーワード二環性β-アミノ酸 / アミド平衡 / ヘリックス構造 / 計算科学 / ヘリックスミミック / 閉環メタセシス
研究概要

本年度は、主に以下の3つの課題について検討を行った。
(1)堅牢なトランスアミド体ヘリックス構造の創製:橋頭位の片方に置換基を導入したβ-アミノ酸の2量体から8量体までのオリゴマーを合成した。X線結晶構造解析および溶液中のNMR解析の結果、橋頭位置換基の立体反発により全てのアミド結合がトランス体に偏ったヘリックス構造を創製した。また、α-プロリンオリゴマーのトランスアミド体ヘリックス構造(polyproline II)と類似した構造を取ることが示唆された。ポリプロリンヘリックスは溶媒によってトランスアミド体とシスアミド体の変換が起こるが、本研究で得られた構造は溶媒や温度にかかわらず安定であった。(2)閉環メタセシス反応を用いたシスアミド体ヘリックスの詳細構造の決定:モデルであるシスアミド2量体について、隣接残基の橋頭位同士を閉環メタセシス反応により分子内架橋したところ、非常に安定であると予想されていたシスアミド体からトランスアミド体への変換が起こった。架橋側鎖の長さに依存して、トランス体への変換比が変化することが分かった。(3)二環性オリゴマーの鎖長依存的な構造誘起の計算化学的解明:橋頭位に置換基を持たない二環性オリゴマーは、シスアミド-トランスアミドの平衡混合物として存在する。規則構造化の可能性について調査するため、2量体から8量体までのMDシミュレーションを行ったところ、オリゴマーが長くなるにつれてトランスアミド体を多く含むコンホマーの存在比が高くなる傾向が見られた。また、実験的に鎖長依存的に円二色性(CD)スペクトルの強度が見られていたが、今回、MD計算により得られたコンホマーの分布とTDDFT法によるCD予測計算を組み合わせてスペクトルのシミュレーションを行った。その結果、実験で見られた鎖長依存性を定性的に再現することができた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

研究実績の概要で述べた課題(1)ー(3)について、(1)については、橋頭位の置換基を分子内水素結合可能なアルコールに変化させた二環性オリゴマーも合成し、主鎖の構造が非水素結合性の置換基の場合と異なるが、トランスアミド体をとることに変わりはないことを見出した。2つある橋頭位(1位、4位)のうち1位に置換基を入れるとトランスアミド体をとり、4位に置換基を入れるとシスアミド体を取ることが分かり、両者はそれぞれ異なるヘリックス構造をとることが示唆された。アミド平衡の効果的な固定法が確立されたと考えている。橋頭位置換基を天然アミノ酸の側鎖に類似した極性基や疎水性基に変化させる検討はまだ行われていないが、26年度に行う予定である、ヘリックスミミックとしてタンパク質-タンパク質相互作用の阻害剤としての応用性を調べるさいに不可欠である。今後検討して行きたい。
(2)については、2量体モデルにおいて、安定なシスアミド体からトランスアミド体への変換という興味深い現象が見出された。一方、従来の目的であった、より長鎖のオリゴマーのヘリックス構造の解明については、2量体の研究がまとまり次第開始したい。
(3)については、おおむね当初の予定を達成した。

今後の研究の推進方策

研究実績の概要で述べた課題について、(1)については、分子内水素結合を導入したトランスアミドオリゴマーの詳細構造について考察予定である。トランスアミドを誘起する本アミノ酸を天然のα-アミノ酸と結合させた場合も、トランスアミドへの固定化と規則構造誘起が起こるか調査し、下記のヘリックスミミックとしての応用につなげたい。
(2)については、アミド平衡の異性化速度が架橋により変化するかどうかを温度可変NMRやNMRスペクトルのシミュレーションの手法を用いて調査する。結果の論文化を行う。一方、従来の目的であった、より長鎖のオリゴマーのヘリックス構造の解明については、2量体の研究がまとまり次第開始したい。
(3)については、論文化を視野に、種々の計算化学的検討を行いたい。
(4)二環性β-プロリンミミックを用いてタンパク質-タンパク質相互作用を制御する化合物を創製する。橋頭位の置換基およびN末、C末の置換基をタンパク質との相互作用に重要な天然アミノ酸の側鎖に類似したものに変化させた短いペプチドオリゴマーを合成し、タンパク質-タンパク質相互作用の阻害活性を評価する。また、二環性β-アミノ酸と天然のα-アミノ酸をつなげたペプチドも合成し、活性を調べる。

  • 研究成果

    (24件)

すべて 2014 2013 その他

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (21件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Trans-nitrosylation directs TRPA1 selectivity in N-nitrosamine activators2014

    • 著者名/発表者名
      Daisuke Kozai, Yoji Kabasawa, Maximilian Ebert, Shigeki Kiyonaka, Firman, Yuko Otani, Tomohiro Numata, Nobuaki Takahashi, Yasuo Mori, Tomohiko Ohwada
    • 雑誌名

      Molecular Pharmacology

      巻: 85 ページ: 175-185

    • DOI

      10.1124/mol.113.08886

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Enantiodivergent Deprotonation-Acylation of α-Amino Nitriles2013

    • 著者名/発表者名
      Michiko Sasaki, Tomo Takegawa, Kunihiro Sakamoto, Yuri Kotomori, Yuko Otani, Tomohiko Ohwada, Masatoshi Kawahata, Kentaro Yamaguchi, and Kei Takeda
    • 雑誌名

      Angewandte Chemie, International Edition

      巻: 52 ページ: 12956-12960

    • DOI

      10.1002/anie.201306443

    • 査読あり
  • [学会発表] Structure Dependency of Potencies and Subtype-selectivities of Endogenous Lipid Ligands against GPCRs2013

    • 著者名/発表者名
      Sejin Jung
    • 学会等名
      The 2nd annual conference of International Chemical Biology Society (ICBS2013)
    • 発表場所
      Shirankaikan, Kyoto, Japan
    • 年月日
      20131007-20131009
  • [学会発表] Development of Nitrosamines, Releasing Nitric Oxide in Cells upon Visible Light Irradiation2013

    • 著者名/発表者名
      Firman
    • 学会等名
      The 2nd annual conference of International Chemical Biology Society (ICBS2013)
    • 発表場所
      Shirankaikan, Kyoto, Japan
    • 年月日
      20131007-20131009
  • [学会発表] リゾホスファチジルセリン受容体アゴニストの配座に関する研究

    • 著者名/発表者名
      中村翔
    • 学会等名
      日本ケミカルバイオロジー学会第8回年会
    • 発表場所
      東京医科歯科大学、東京
  • [学会発表] テトラヒドロピラン骨格を用いたグリセロール部位のコンフォメーションを固定したリゾホスファチジルセリン誘導体の合成

    • 著者名/発表者名
      ジョンセジン
    • 学会等名
      日本ケミカルバイオロジー学会第8回年会
    • 発表場所
      東京医科歯科大学、東京
  • [学会発表] カルバメートの選択的結合開裂によるイソシアネートカチオン発生法の開発と芳香族求電子置換反応への応用

    • 著者名/発表者名
      黒内寛明
    • 学会等名
      第24回基礎有機化学討論会
    • 発表場所
      学習院大学、東京
  • [学会発表] イソシアネートカチオンを用いた芳香族化合物の新規アミド化反応の開発

    • 著者名/発表者名
      澄田明成
    • 学会等名
      第24回基礎有機化学討論会
    • 発表場所
      学習院大学、東京
  • [学会発表] プロリン型二環性β-アミノ酸二量体の分子内架橋によるアミド シス・トランス平衡の制御

    • 著者名/発表者名
      劉シン
    • 学会等名
      第43回複素環化学討論会
    • 発表場所
      長良川国際会議場、岐阜
  • [学会発表] 芳香環の直接的ラクタム化反応による効率的なジヒドロイソキノロン誘導体の合成ー強酸・室温条件下でのカルバメートの結合開裂によるイソシアネートカチオンの発生-

    • 著者名/発表者名
      黒内寛明
    • 学会等名
      第43回複素環化学討論会
    • 発表場所
      長良川国際会議場、岐阜
  • [学会発表] 二環性β-アミノ酸オリゴマーを用いたヘリックス構造のデザインと合成および構造特性

    • 著者名/発表者名
      王思遠
    • 学会等名
      第57回日本薬学会関東支部大会
    • 発表場所
      帝京大学薬学部、東京
  • [学会発表] GPCRをレセプターとするリゾリン脂質の活性構造探索のための有機合成的アプローチ

    • 著者名/発表者名
      鄭 世珍
    • 学会等名
      第57回日本薬学会関東支部大会
    • 発表場所
      帝京大学薬学部、東京
  • [学会発表] 可視光照射により一酸化窒素を放出するニトロソアミンの細胞応用性の最適化

    • 著者名/発表者名
      フィルマン
    • 学会等名
      第57回日本薬学会関東支部大会
    • 発表場所
      帝京大学薬学部、東京
  • [学会発表] 強酸条件下におけるカルバメートを用いた芳香族化合物のアミド化反応の開発

    • 著者名/発表者名
      澄田明成
    • 学会等名
      第57回日本薬学会関東支部大会
    • 発表場所
      帝京大学薬学部、東京
  • [学会発表] 新規膜レセプターアゴニストの構造要求性に関する研究

    • 著者名/発表者名
      中村翔
    • 学会等名
      第39回反応と合成の進歩シンポジウム
    • 発表場所
      九州大学、福岡
  • [学会発表] 大和田智彦

    • 著者名/発表者名
      ベックマン転位条件におけるオキシムの新規転位反応 一過的なハロゲン-窒素結合を形成する隣接基関与
    • 学会等名
      第39回反応と合成の進歩シンポジウム
    • 発表場所
      九州大学、福岡
  • [学会発表] Design, Synthesis and Structural Studies of Helical Oligomers Based on a Constrained Bicyclic Building Block

    • 著者名/発表者名
      Siyuan Wang
    • 学会等名
      The 4th Asia-Pacific International Peptide Symposium (APIPS) (第50回ペプチド討論会)
    • 発表場所
      Hotel Hankyu Expo Park,Osaka
  • [学会発表] Control of Amide Cis-Trans quilibrium through Cross-Linking between Side Chains of Proline-like Bicyclic β-Amino Acid Dimers

    • 著者名/発表者名
      Xin Liu
    • 学会等名
      The 4th Asia-Pacific International Peptide Symposium (APIPS) (第50回ペプチド討論会)
    • 発表場所
      Hotel Hankyu Expo Park,Osaka
  • [学会発表] TRPA1チャネルを選択的に活性化できるトランスニトロシル化反応

    • 著者名/発表者名
      大和田智彦
    • 学会等名
      日本薬学会第134年会
    • 発表場所
      熊本大学、熊本
  • [学会発表] ブレンステッド酸を用いた芳香環への効率的な2級・3級アミド基導入反応の開発

    • 著者名/発表者名
      澄田明成
    • 学会等名
      日本薬学会第134年会
    • 発表場所
      熊本大学、熊本
  • [学会発表] オキシム新転位反応のためのテトラロンのペリ位置換基導入法の確立

    • 著者名/発表者名
      福田朋也
    • 学会等名
      日本薬学会第134年会
    • 発表場所
      熊本大学、熊本
  • [学会発表] ベックマン転位条件下で起きるオキシムの新規転位反応におけるハロニウム中間体の安定化

    • 著者名/発表者名
      寧桜唐
    • 学会等名
      日本薬学会第134年会
    • 発表場所
      熊本大学、熊本
  • [学会発表] 分子動力学計算を用いた架橋β-プロリンオリゴマーの規則構造化の評価

    • 著者名/発表者名
      尾谷優子
    • 学会等名
      日本薬学会第134年会
    • 発表場所
      熊本大学、熊本
  • [備考] 東京大学 大学院薬学系研究科 薬化学教室

    • URL

      http://www.f.u-tokyo.ac.jp/~yakka/index.html

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公開日: 2015-05-28  

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