研究課題
本研究課題では、プロリン型の3級アミド結合を持つ二環性β-プロリンミミックを用いた機能性物質創製のための構造化学の基礎および応用研究を行うことを目的とした。3級アミドはシスアミド体とトランスアミド体の平衡混合物になることが多く、規則構造の創製にはアミド平衡の制御が必須である。アミド平衡をシス・トランスどちらか一方に完全に制御したプロリン誘導体の報告は少ない。3年間の研究期間を通じて、二環性骨格の橋頭位に1個置換基を導入したβ-アミノ酸を創製し、アミド平衡をシスあるいはトランス一方に完全に偏らせることに成功した。また、このようなβ-アミノ酸を2個連結させ、閉環メタセシス反応を用いて橋頭位置換基同士を結んだ環化モデルペプチドのアミド結合の溶液構造解析を行ったところ、環化前はシスアミド体のみを取っていたが、環化によりシス/トランス比や回転障壁が変化し、環を作るリンカー長が短いほどトランス体の割合が増え、回転障壁も低下することを見出した。トランスアミド体をとるβ-アミノ酸を2個から8個連結させたペプチドオリゴマーを創製し、溶液構造解析や短い(2-3量体)オリゴマーのX線結晶構造解析を行った結果、安定なヘリックス構造をとることを示した。これは生体にない構造規則性を持つ伸長型ヘリックス構造であり、人工アミノ酸であるため生体内での酵素消化に対する安定性をもつと予想される。このペプチドオリゴマーのうちのいくつかが、あるタンパク質-タンパク質相互作用を阻害することを見出した。今後は阻害活性を改善すると同時に、タンパク質への作用部位等を明らかにしたい。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (23件) (うち招待講演 1件) 備考 (1件)
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http://www.f.u-tokyo.ac.jp/~yakka/index.html