研究課題/領域番号 |
25460010
|
研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
松谷 裕二 富山大学, 大学院医学薬学研究部(薬学), 教授 (50255858)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 天然物 / ハイブリッド化 / 神経賦活作用 / デノソミン |
研究実績の概要 |
前年度までに、新規な神経系賦活薬の開発を念頭に、デノソミンーVD3ハイブリッド化合物の設計と合成を行い、活性評価により本薬物設計戦略が有効であることが確認できた。そこで今年度は、更なる活性の向上を目指し、新規誘導体の合成と活性評価を実施した。 VD3受容体には核内受容体と細胞膜受容体が知られており、これまでの検討においてデノソミン誘導体は後者に対する親和性が高いことが示唆されている。この場合、リガンドとなるVD3誘導体は6-s-cisコンホーマーがより高い親和性を有することから、当該部位をcis-アルケン構造で固定した新しいデノソミンーVD3ハイブリッド誘導体の設計と化学合成に着手した。 合成戦略としては、cis-アルケン構造を対応するアルキンのcis選択的部分還元で構築するものとし、本アルキン体はステロイドCD環部のトリフレート体を基質としたSonogashiraカップリングにて合成するように考えた。CD環トリフレート体については、Hajosケトンを出発原料として、15工程にて効率よく合成するルートを開拓し、一方A環に相当しカップリングパートナーとなるアルキン体については、文献既知の手法に準じてシキミ酸から合成することに成功した。これらのSonogashiraカップリング反応は円滑に進行し、最後のアルキン部分還元にも成功して、設計した新規デノソミンーVD3ハイブリッド誘導体(2種)の合成を達成した。 これらの神経系賦活活性について、アミロイドβにてダメージを与えた神経細胞を用いて評価した結果、1つの誘導体について、親化合物であるデノソミンを上回る活性を示すことが確認された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度までに得た知見を基にして、受容体との親和性を考慮しながら新たなドラッグデザインを実施し、その化学合成ルートを開拓することに成功するとともに、in vitro活性試験において良好な結果を得ることができているため。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度、合成に成功した新規誘導体は、活性の点では有望な結果が得られたが、化合物の生理的条件下における安定性については難点があることが示唆されている。今後は、化合物の化学安定性を向上させるための構造設計が必要であり、その化学合成と活性評価により、更に構造活性相関研究を進めて行く予定である。
|