研究実績の概要 |
前年度までに開発したフタロシアニン鉄と空気を活用する触媒的光延反応について、最終年度では、その反応機構の解析を行った。2-フェニルアゾカルボキシラート類とトリフェニルホスフィンとの反応を速度論的に解析した結果、エチル2-(4-シアノフェニル)ヒドラジンカルボキシラートが触媒的光延反応の有効な触媒として新たに見出された。本触媒は特にカルボン酸以外の求核剤との反応に有効であり、前年度までに見出したエチル2-(3,4-ジクロロフェニル)ヒドラジンカルボキシラートと組み合わせることで大幅な適用範囲の拡大を達成することができた。また、中間体の解析研究の過程でスロベニアのリュブリャナ大学の研究グループ(相手側研究者:Janez Kosmrlj教授)と共同研究を行い、現在も別の研究テーマに対象を広げて共同研究を継続中である。触媒的光延反応の全ての成果を記載した詳報が最近になって公表され、本研究課題の中では当初の予想以上の成果を上げたものである。 また、当初の研究計画に関連して、ヒドラジン化合物から新たな反応活性種を発生させて結合形成反応などに活用する研究途上で、ベンザインやヒドラゾンから発生させたカルベン種とのヒドロホウ素化反応と見出すことができた。本反応はN-ヘテロサイクリックカルベン-ボランという安定なホウ素錯体を活用することで達成された。N-ヘテロサイクリックカルベン-ボランについては、研究者が以前、客員研究員として滞在していたピッツバーグ大学の研究グループ(相手側研究者:Dennis P. Curran教授)と大きく関連があったので、共同研究を行うこととし現在も継続中である。最終年度では、ヘキサデヒドロ-Diels-Alder反応を活用したベンザインのヒドロホウ素化についての成果を論文を公表することができた。当初の研究計画から変更を生じたものもあるが、そのかわりに新たな成果を得た。
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