アミドはカルボン酸とアミンから簡便に合成でき、かつ安定であるため、タンパク質などの生体分子のみならず、繊維など人工高分子においても、広く使われている。アミドの安定性はカルボニル酸素に対して窒素原子の非共有電子対が流れ込むことによる共鳴安定化によるものである。それにより、アミドのカルボニル酸素の塩基性は、他のカルボニル化合物に比較して高く(アミド>エステル>ケトン>アルデヒド)、その一方で、カルボニル炭素の求電子性は低い(アルデヒド>ケトン>エステル>アミド)。私は、この塩基性(求核性)を利用しアミドを活性化することで、アミド結合を温和な条件で切断する手法の開発を行った。すなわち、我々が以前開発した、中性条件で進行するベンジル化剤DPT-BMを用いた求電子的ベンジル化を起点とするアミド切断法である。本手法の反応条件(当量、溶媒、濃度、温度、添加物、反応時間)の検討を行った結果、特に、濃度や溶媒に大きく影響を受けることを明らかにし、これらを最適化することで高収率にてアミド結合の切断が可能となった。次にこの切断反応の基質一般性を調べたところ、一級・二級・三級アミドは各々、そのアミド結合周りの置換基の数・立体障害の程度に応じて反応性が大きく異なることが分かった。この結果を利用して、異なるアミド間の選択的切断反応が可能であった。更に他の官能基が共存するアミドにおいても、選択的にアミド結合と反応し、切断することが可能であることが示された。現在、これらの成果に関して論文執筆中である。
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