研究課題/領域番号 |
25460013
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
北村 正典 金沢大学, 薬学系, 准教授 (80453835)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | トリアジン / アミド化 / 不斉合成 / 脱水縮合反応 |
研究実績の概要 |
本研究では、不斉合成反応によって疾患の分析が可能となるという新しい概念を創出するにあたり、そのための基盤となるカルボン酸の速度論的光学分割を用いた触媒的不斉アミド化反応の開発を進めている。触媒がラセミ体カルボン酸の不斉を制御する本反応は、これまでにない初の反応様式であり、生成物アミドの不斉中心を活かした医薬品などの合成を可能とする研究でもある。これまでの研究で、以下の知見を得た。 (1)不斉合成反応による疾患の分析を行うため、タンパク質への反応について詳しい知見を得る必要がある。タンパク質への標識化反応、すなわちモジュール式アフィニティーラベル化法(MoAL法)のこれまでの研究から、第3級アミンを導入したリガンド分子(リガンド触媒)は厳密な設計を要しないことが示唆されていた。そこで、アビジン標識化反応に最適化したリガンド触媒を用い、リガンドが共通であるが標識反応部位となるカルボン酸側鎖(グルタミン酸)の存在位置が全く異なるストレプトアビジンについて標識化反応を行ったところ、標識化反応が進行することを見出した。この結果は、MoAL法が未知の標的タンパク質の探索に有用な実用的技術であることを示すもので、学会発表や論文発表を行った。 (2)開発を行っている本不斉アミド化反応の重要な中間体は、トリアジニルアンモニウム塩である。このトリアジニルアンモニウムの研究で得られた知見を利用して、トリアジニルアンモニウムの効果的な脱離反応の開発や新しいベンジル化剤の開発などに至り、学会発表および論文発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究の中心であるラセミ体カルボン酸の触媒的速度論的光学分割を用いたアミド化反応において、触媒置換基やトリアジン置換基を変更し、脱水縮合反応の反応性および立体選択性への影響をすでに明らかとしている。特に触媒がラセミ体カルボン酸の不斉を制御する本反応は、これまでにない初の反応様式であり、学術的価値も高いと判断される。また、タンパク質への反応についての知見や、この研究結果を基に開発された反応などについて論文発表をするまでに至った。以上の理由からおおむね順調であると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの成果に基づいて、環状アミドであるラクタムの不斉合成を試みたり、また、ジカルボン酸のアミド化による不斉非対称化反応の検討を行う予定である。また、速度的光学分割法が100%の収率で生成物を得ることができないことに対し、N-アシルアミノ酸ラセミ化酵素を共存させた動的速度論的光学分割も検討する予定である。最後にタンパク質を対象とした不斉合成反応について検討を行いたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究室にストックされている試薬やガラス器具を活用することで、当初予定していた反応剤の原料や反応基質、ガラス器具の購入が抑えられたため。
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次年度使用額の使用計画 |
今後は、反応剤自身の改良も必要となるため、この合成研究に使用する。また、論文投稿や学会発表にも使用する。
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