研究課題
三価の超原子価有機臭素および塩素化合物の化学はほとんど未踏の研究領域であるため、従来我々はその特異な反応性を明らかにし、またそれを合成化学的に応用すべく研究を行ってきた。本課題研究では、これらの化合物の反応特性の根拠ともいえる脱離能を明らかにするため、各種超原子価ハロガン化合物、具体的には、シクロヘキセニルブロマン、ブロモニウムイリド、クロロニウムイリド、およびジアリールクロラン、などを合成し、その分解反応速度の高精度測定を行ってきた。一連の実験の結果、これまで全く知られていなかった、超原子価ハロゲン化合物間の脱離能をはじめて比較することに成功し、また、優れた脱離基としてよく知られている、窒素(ジアゾニウム基)の脱離能との相対的脱離能も明らかにすることができた。また、第17族の超原子価ハロゲンの化学のみならず、第18族超原子価キセノン化合物の特性についても解明すべく、アリールゼノニウム化合物の合成、およびその脱離能の解明についても広く検討した。その結果、これらキセノン誘導体の脱離能は上記ハロゲン族を大きく上回ることを明らかにすることができた。また、脱離能の評価に用いたジアリールハロガンの求核置換反応の反応機構については、実験化学、計算化学の両面から、従来にない、SN1型の単分子分解機構を経由することも明らかにした。ハロニウムイリドの分解反応機構も同様に単分子分解機構を経由することを明確にすることができた。
すべて 2016 2015 その他
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 謝辞記載あり 4件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 6件) 図書 (1件) 備考 (1件)
The Journal of Organic Chemistry
巻: 81 ページ: 3188-3198
10.1021/acs.joc.6b00142
Chemical Communications
巻: 51 ページ: 7962-7965
10.1039/C5CC02000J
Journal of the American Chemical Society
巻: 137 ページ: 15082-15085
10.1021/jacs.5b10321
Tetrahedron
巻: 71 ページ: 5849-5857
10.1016/j.tet.2015.05.107
http://www.f.u-tokyo.ac.jp/~kisoyuki/