研究課題/領域番号 |
25460018
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
井川 貴詞 大阪大学, 薬学研究科(研究院), 助教 (20453061)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ヘリセン / ベンザイン / アライン / フラン / 環化付加反応 / 不斉合成 / 位置選択性 / ベンズジイン等価体 |
研究概要 |
本申請研究は、申請者が独自に開発中の位置選択性制御法を用いて多様な光学活性ヘリセン類を不斉合成し、種々の機能を有する新規ヘリセン誘導体を創製することを目的とする。本年度は、新規ヘリセン合成の基盤となる基礎反応を確立するため、ベンザインの位置制御法を確立するのと同時に、新規ベンズジイン等価体の開発を中心に検討した。特に、ベンズジイン等価体の開発に関して以下詳細を論述する。まず、二種類の1,3-ベンズジイン等価体候補化合物(二つのTMS基を有する前駆体1と、TMS基とTBDMS基を有する前駆体2)を合成し、目的の位置でベンザインが発生するかどうかを調べた。すなわち、2,5-ジメチルフラン存在下、等価体候補化合物1又は2のアセトニトリル溶液中、フッ化セシウムを添加して室温で3時間撹拌した。その結果、候補化合物1を用いた場合、標的としていた1回ベンザインが発生し、フランとの環化付加反応が進行した環化付加体や、二回の環化付加反応が進行した生成物は全く観測されなかったが、候補化合物2を原料とした場合では、目的の位置でベンザインが一回のみ発生し、フランとの環化付加反応が進行した付加体3が収率58%で得られた。続いて、得られた3をフラン存在下、THF中、0 ℃でBu4NF(tBuOH)4と反応させたところ、2回目の環化付加反応が進行し、五環性の化合物を収率59%で合成することができた。以上の結果より、2は二回の環化付加反応がstep-by-stepで進行する、優れた1,3-ベンズジイン等価体であることが分かった。また、同様にstep-by-stepでベンザインを発生させる1,4-ベンズジイン等価体についても開発に成功した。以上、今回に成功したベンズジイン等価体を用いれば、多様な官能基を有するヘリセン類を容易に合成できるものと期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請者は、科学研究費補助金[スタートアップ(1回)、若手研究B(計2回)]を拝受し、ホウ素やケイ素を用いたベンザイン又はピリダインの反応位置制御法を開発している。本年度は、同補助金(基盤研究C)の初年度として、ヘリセン合成のために重要な鍵反応となるフラン類との位置選択的環化付加反応が進行することを確認した。更に、ヘリセン合成に有用な新規1,3-及び1,4-ベンズジイン等価体を開発することにも成功した。これらの成果を合わせれば、次年度以降、官能基化されたヘリセン類を自在に合成できると確信している。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は順調に実施計画が進行したので、平成26年度も継続してヘリセン合成の基盤となる基礎反応の研究(①)と、当初の計画通り②~③のヘリセン合成研究を推進する。 ①初年度(平成25年度)に開発したベンズジイン等価体は、その合成に多段階を要する。そこで、本等価体の短段階合成法を開発すると同時に、より単純なベンズジイン等価体の開発研究を行う。 ②上記①にて開発したベンズジイン等価体を用いて、ヘリセン合成を行う。 ③シリルベンザインやホウ素ベンザインを用いてヘリセン類の不斉合成研究を行う。 最終年度(平成27年度)には、開発した新規手法によって、不斉有機触媒又は不斉リガンド等の機能を有するヘリセン類を開発する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は、ヘリセン合成の基盤となる基礎的反応、中でもベンズジイン等価体の開発を中心に研究してきた。従って、当初購入を予定していた高価な光学活性試薬を殆ど購入しなかったため、予定よりも試薬の購入費用がかからなかった。今年度は、実際にヘリセンを不斉合成する予定のため、昨年度使用しなかった多くの光学活性試薬を購入する必要がある。従って、昨年度からの繰越金は殆ど消耗品として使用する予定である。これに加え、当初予定していた平成26年度の研究費については予定通りの使用計画である。その概算を下記の使用計画に記載する。 物品費:1,725,314円 旅費:200,000円 人件費・謝金:0円、その他:0円
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