研究課題
分子内にオレフィンを有するオキシム、ω-アルケニルオキシムのアシル化剤を用いる分子内付加環化反応について研究を続けた。その結果、ω-アルケニルオキシムとS-アルコキシカルボニル-2-メルカプトピリジン(PySCO2R)をアシル化剤として用いて反応させると、N-アシル化、次いで生じたN-アシルニトロンの分子内付加環化反応が進行して付加環化体が高収率で得られることを見いだした。通常、フリーのオキシムをアシル化剤と反応させるとN-アシル化ではなくO-アシル化が進行すること対照的である。この理由は、ピリジン窒素とオキシムの水酸基とが水素結合を形成し、イオウ原子が結合することによりソフトになったカルボニル基がオキシムのよりソフトな窒素原子の攻撃を受けるためと考えられる。これにより。PySBocだけでなく、PySCbz、PySFmoc、PySTroc、PySTeoc、PySAllocなど様々なアシル剤を合成し、ω-アルケニルオキシムの分子内付加環化反応を行うことが出来た。また、ω-アルケニルオキシムのテザーに酸素を有するもの、窒素を有するものなど、何れもクリーンな反応を起こす。また、アルケン部が幾何構造が生成物の立体化学に反映される。さらに、この付加環化反応で第四級炭素も構築できることが分かった。現在では、キラルなアシル化剤PySCO2R*を用いる光学活性な付加環化反応を検討し、カンファー誘導体を用いると10:1程度の立体選択性を示すことが分かっている。ここで、合成したPySCO2Rは優れた窒素選択性をもつアミノ基の保護基導入剤となることが分かった。PySBoc、PySCbz、PySFmoc、PySTroc、PySTeoc、PySAllocは何れもメタノール中で使用でき、溶媒のOHと反応すること無く基質のNH2をアシル化する。グルコサミンをメタノール中PySFmocと反応させると多数の水酸基(OH)では無く、アミノ基(NH2)をFmoc化し、N-Fmocグルコサミンを高収率で与えた。
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