1.η6-アレーン型クロム錯体の芳香族求核置換反応によるGKK1032A2の13員環構造の構築 前年度までに得られた成果に基づき、芳香族求核置換反応による13員環構築に至るまでの合成経路について詳細に検討した結果、各段階における脱錯体化を最小限に抑えることに成功した。また、芳香族求核置換反応の際に大過剰量の水素化カリウムを塩基として用いることにより、望みの13員環化体の収率を73%にまで向上させることに成功した。これにより、GKK1032A2の13員環構造構築に関する問題をほぼ解決することができた。 2.GKK1032A2の全合成 上述の芳香族求核置換反応によって得られた13員環化体に対して、数工程の官能基変換を行うことにより、望みのγ-ヒドロキシラクタムを最終成績体として得ることができた。この成績体の1H-NMRスペクトルは、GKK1032A2について報告されているものと良く一致しており、以前に分子内Ullmann反応による13員環構築を経て微量得たものと同一の化合物であった。現在、13C-NMRや比旋光度を初めとする各種物性値を収集しうる量のサンプルを得るべく合成を進めており、それが完了次第、GKK1032A2の全合成の達成を公表する予定である。 3.FO-7711CD6の全合成研究 本研究開始以来の懸案であった13員環化の際の収率の問題をようやく解決することができたので、FO-7711CD6として推定した化学構造をもつ化合物の合成に着手した。本化合物のデカヒドロフルオレン骨格部位の合成については、途中までGKK1032A2と同じ経路で実施することができるので、既に確立した方法を利用して進行中である。今年度中には目的物の合成を達成できるものと考えている。
|