主に以下の3点に関することを明らかにし、スピロボラートの分子技術を利用した超分子ポリマーの開発と評価、また、スピロボラート化学からの新たな発展性を見出した。 スピロボラート分子による超分子ポリマーとして、ランタノイド金属との超分子錯体の形成に成功した。この錯体は単結晶X線構造解析により、その構造を決定し、アニオン性お椀型スピロボラートホスト分子の中心にランタノイド金属が位置し、ランタノイド金属はさらに再結晶溶媒分子であるジメチルホルムアミドに覆われた球状ゲストとして存在していた。この球状ゲストは上下にアニオン性お椀型スピロボラートホスト分子に挟まれた、連続構造をとっており、このことから超分子ポリマーとしての構造を確認した。 また、新しいスピロボラート分子としてジフェニルアセチレンで架橋されたビスナフタレンジオールとアントラキノンタイプのテトラオール体との自己組織化による大環状スピロボラートの合成により、その内部空間にナフタレンを内包したメチルビオロゲンタイプのカチオン分子の包接に成功した。この構造もまた、単結晶X線構造解析により確認している。また、多層からなる大環状スピロボラートの構築にも成功し、このホスト分子もメチルビオロゲンタイプのカチオン分子を包接する能力があることを単結晶X線構造解析により確認した。 スピロボラート類縁体として、ホウ素原子を炭素原子に置き換えた電荷を持たない中性スピロ化合物のツインボウル合成も行い、芳香環による相互作用により、フラーレンの包接結晶の作成に成功し、単結晶X線構造解析によりその構造を確認した。この結果からフラーレンゲスト分子はこれまでのツインボウル同様ホスト分子の両面の認識部位により認識され、その結果、連鎖構造(超分子ポリマー)を形成していた。
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