研究課題
最終年度および研究期間全体で得られた研究成果は以下の通りである。1.アセチルコリンセンサーの開発と応用:最終年度は、主に、開発したアセチルコリンセンサーを用いて脳内の自発的なアセチルコリン変動を測定した。覚醒マウスの海馬にセンサー電極を設置し、頭部固定下でのアセチルコリン変動を測定したところ、時間と共にセンサー電位が低下することを見出した。研究期間全体では、サブμMレベルのアセチルコリンを測定できる高感度センサーを開発し、さらに微小化することで脳に適用可能なセンサーに改良し、覚醒マウスの海馬における刺激誘発性さらには自発性のアセチルコリン変動を明らかにした。2.センサー法を利用した細胞膜を標的とする薬物の作用機構の解明:最終年度は、主に、クロリン系光増感剤の光不活性化作用を、赤血球の形態変化と関連づけて検討した。その結果、赤血球膜に大きな損傷を与えたクロリン系色素は、赤血球の形態をエキノサイト型に変形させたことから、膜脂質二重層の外層部分に蓄積したクロリンが光不活性化作用に関与していることを明らかにした。研究期間全体では、ポルフィリンやクロリン系光増感剤は、①細菌膜に対して膜透過性亢進や呼吸阻害を引き起こし、膜電位を消失させることで細菌を不活性化させること、②光不活性化作用の強い光増感剤は赤血球の形態をエキノサイト型に変形させることを明らかにした。3.その他、研究期間全体では、シクロデキストリン誘導体や新規抗生物質ライソシンなどの膜作用性薬物の抗菌作用発現機構の解明にカリウムセンサー法が有効であることを示した。また、酵素センサーの高感度化を、過酸化水素の電気分解を促進させる触媒探索の観点から進めた。
すべて 2016 2015
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就実大学薬学雑誌
巻: 3 ページ: 37-46