昨年度までに、生体計測ESR/スピンプローブ法やESR/スピントラップ法を用いて、DSS誘発大腸炎マウスの大腸組織内に浸潤したマクロファージでNOが産生し、CD14-TLR4-NF-kB経路を正に制御していることを明らかにした。しかし、その制御機序については不明なままであった。そこで、最終年度では、マウス腹腔マクロファージ細胞(RAW264.7)を用いてNOによるシグナル制御メカニズムの検討を行った。 RAW264.7細胞を低濃度LPSとNOC-18 (徐放性NO放出剤)で刺激したところ、細胞溶解液中のCD14やiNOS、TNF-alphaの発現や核画分中のNF-kB p65レベルのみでなく、培地中IL-6濃度や細胞溶解液のリン酸化STAT3発現の上昇が認められた。肝Kupffer細胞を用いた先行研究では、LPSで刺激するとSTAT3の活性化を介してCD14発現が上昇するとの報告があることから、STAT3阻害剤S3I-201で前処理したところ、CD14の上昇は有意に抑制された。NF-kB p65、iNOSやTNF-alpha、IL-6の上昇も抑制された。 以上より、活性化マクロファージから産生したNOはSTAT3の活性化を介してCD14の発現を誘導することで、CD14-TLR4-NF-kBシグナル経路を活性化すること、NF-kBの活性化によりIL-6濃度が上昇し、さらなるSTAT3の活性化を引き起こすことが明らかとなった。
|